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【○】「高原のフーダニット」有栖川有栖

2013年06月19日 21:15

 「分身のような双子の弟を殺しました」臨床犯罪学者・火村英生に、電話の男は突然告白した。そして翌日、死体は発見された。弟に加え兄の撲殺体までも……。透徹した論理で犯人を暴く表題作はじめ、推理作家・有栖川有栖の夜ごとの怪夢を描く異色作「ミステリ夢十夜」、神話のふるさと淡路島で火村を待ち受ける奇天烈な金満家殺人事件「オノコロ島ラプソディ」。絶品有栖川ミステリ全3編。

 ということで、読みました。
 火村&作家アリスシリーズ中編集。3編のうち「ミステリ夢十夜」はショートショート10編をまとめた位置付けなので、中編集と呼ぶには印象がか細い。というのも、それ以外の2編の味付けが薄いというか、トラベルミステリの雰囲気が色濃くて、本格ミステリの面白さを純粋に追うと恐らく肩透かしを食うだろう。火村&アリスのコンビが右往左往する様を見ているだけで楽しいのは事実なのだけれど、短編を水増しした印象も拭えない。有栖川氏に珍しく、フェアプレイの精神に遊び心が強く宿った一冊であるということになるのかもしれない。


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【○】「江神二郎の洞察」有栖川有栖

2013年06月15日 22:09

 その人の落とした『虚無への供物』が、英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった―。大学に入学した一九八八年四月、アリスは、江神二郎との偶然の出会いからEMCに入部する。江神、望月、織田とおなじみの面々が遭遇した奇妙な出来事の数々。望月の下宿でのノート盗難事件を描く「瑠璃荘事件」をはじめ、アリスと江神の大晦日の一夜を活写する「除夜を歩く」など、全九編収録。昭和から平成への転換期を背景に、アリスの入学からマリアの入部までの一年を瑞々しく描いた、ファン必携のシリーズ初短編集。

 ということで、読みました。
 学生アリスシリーズ、或いは江神シリーズか。その初めての短編集は、シリーズのプロローグとも呼べるエピソードから始まる。厳密に正せば25年も前の物語であり、「リアルタイム」な読者を除いてなお、作中の時代設定に郷愁に似たものを感じること必至。やはり学生が主人公であるからか、随所に「若さ」が垣間見えるのですよね。青春ミステリ、なんて言葉も似つかわしいか。このシリーズの好きなところは、作中で江神が指摘しているように、何が謎なのかを見極めることから謎解きが始まること。
 そして夏を経た語り手のアリスの、優しい心傷。 本格ミステリのシリーズキャラクターにしては珍しく(というイメージをつい抱いてしまうほど)、ひとつの事件について気持ちを引きずる描写が印象的に残ります。そういうところの描き方を繊細に費やすことって、ミステリの世界ではなかなか難しいと思う。その点、本作のアプローチは、なんだか、ぶっきらぼうだけれど、優しい気がする。


【○+】「私の嫌いな探偵」東川篤哉

2013年06月10日 20:08

 うら若き美貌のビルオーナー、二宮朱美。二十代半ばにして、ビルの最上階に住まい、家賃収入で優雅に日々を送っている…はずが、なぜか、気がつけば奇妙なトラブルに振り回されてばかり。それもこれも、階下に入居している「鵜飼杜夫探偵事務所」がいけないのだ!今日もまた、探偵事務所を根底から揺るがす大事件が巻き起こる。

 ということで、読みました。
 烏賊川市シリーズは東川氏の代表作にして、一番「普通」なシリーズであると個人的には思っているので、今回も割と普通に面白く読みました。やはりあまり読者に媚びたり狙ったりした作品作りはして欲しくないものです…、閑話休題。今回は朱美さんに語り手の視点が移った話でまとめられた短編集で、流平くんの扱いの雑さにホロリときてしまう。
 「烏賊神一族の殺人」が屈指の出来で、先入観というか常識をくるりと反転させることでスマートな決着を見せる手腕が…、手腕を見せるのが、あの人なんだもの。…いや、人というか、もう、可笑しい!


【◎】「本格ミステリ大賞全選評 2001~2010」本格ミステリ作家クラブ

2013年06月09日 20:06

 本格ミステリ大賞は、実作者である140名ほどの会員による選評付きの記名投票で受賞作が決定する、特徴的な形式の文学賞。本書は開始から10年の全選評を収録した、迫真の文学賞ドキュメントである。本格ミステリとか何か。その答えは、本書のなかにある。コラム「私の愛する本格ベスト3」も収録した完全保存版!

 ということで、読みました。
 2001年から10年までの本格ミステリ大賞の選評をまとめた本。ミステリ作家による本気、本音の書評が集った「本格選評論」とでもいうべきものがみっしりと詰まっているため、物凄く読み応えがあります。読み進めるに連れ、本格ミステリの作られ方というか、在り方というか、売り出し方というか、読まれ方というか、その束縛性やら自由の希求性やらが異なった形で浮き彫りになってくるようで、その辺りも興味深い。ともあれ、多数の「候補作」「受賞作」によって、これでまた、読みたくなるミステリがたっぷりと増えること間違いなし。


【◎】「キノの旅 XVI the Beautiful World」時雨沢恵一

2013年05月28日 20:44

 人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の物語。全10話収録。

 ということで、読みました。
 本作が現代風刺に基づく現代ファンタジーの様相を呈しつつある、と感じ始めたのは、シリーズが10作を越えた辺りだっただろうか。現実はファンタジーに近づきつつある…、いや、その逆なのだ。幻想、絵空事だと考えられていたことが科学の力で現実に伴うようになってくると、それまでファンタジーでしかなかったことが真面目に議論されねばならなくなってくる。問題は、そういった知識や技能を共有する垣根の存在なのだ。このシリーズでは、その垣根の外側では情報が断絶され、小さな世界が点在している。唯一、旅人たちが、現実を知る。


【◎】「幸・不幸の分かれ道」土屋賢二

2013年05月25日 11:52

 笑う哲学者、土屋賢二の渾身の書き散らし!
 「人生は無意味だ」「能力は伸ばせ」「歴史に学べ」「目的をもて」……。どれもこれも疑わしい!
 われわれは不幸を避けようと努力しますが、どれほど力を尽くしても不幸は避けられません。どんな人でも老いるし、病気になるし、最後は死にます。全力を尽くしてもどうやっても避けられない不幸な出来事に襲われたら、じっと耐えるしかないんでしょうか。そんなことはありません。まだ笑うことが残っています。
 この本を読めば、幸福にはなれませんが、不幸になる可能性はだいぶ減ります。たぶん。

 ということで、読みました。
 本書を読んで一番驚いたのは、本書は「ユーモアエッセイではない」ということ。本編中に土屋氏が言明しているのだから間違いない。確かに、これまで土屋氏の多くのエッセイを読んできたのだけれど、もしかしたら本書が一番真面目に、かつ分かりやすく人生についての哲学を指南しているのかもしれないと感じたのです。土屋氏を(その作風を)知らない一般の読者が読んでも、とっつきやすく「哲学」出来るのではないかと感じます。灰汁の強さが土屋氏の持ち味だと信じて疑わない僕のような読者には、軽いカルチャーショックでした。面白かった。


【○+】「サヴァイヴ」近藤史恵

2013年05月14日 17:19

 他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、きっと誰にも理解できない。ペダルをまわし続ける、俺たち以外には―。日本・フランス・ポルトガルを走り抜け、瞬間の駆け引きが交錯する。ゴールの先に、スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。

 ということで、読みました。
 「サクリファイス」「エデン」に続く、ロードレースに関わる男たちのストイックな葛藤と戦う姿を描いた短編集。既存の作品の幕間や過去、未来を描く形で物語が編み込まれているので、ひとつの終着点としても読むことが出来るし、当然、新たな始まりの物語として読むことも可能。当初はミステリ小説としての意味合いも含んでいた本シリーズは、そのベースのロードレースの描写が興味深く面白いために、ミステリである必然性を取っ払っているのだけれど、個人的には正解だと思う。華々しいというよりも淡々としているのに、こんなにも面白い。


【○】「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」東川篤哉

2013年05月12日 17:14

 39歳独身の美人刑事《八王子市警の椿姫》こと椿木綾乃警部と、椿木警部に罵られることを至上の喜びとするその部下、小山田聡介。八王子市警の名コンビが勇んで出向く事件現場には、いつもなぜか、竹箒を持った謎の三つ編み美少女がいて――。本格ミステリーのトリックと、抱腹絶倒の掛け合いが最高の化学反応を起こすユーモアミステリー。

 ということで、読みました。
 「本格ミステリ+魔女」。これまでにそんなガジェットの組み合わせがなかったわけではない。しかし本書はファンタジーではない。事件が起きる最中に魔女のマリィが見せるファンタジックな所業は殆ど隠し味程度のもので、いつもの東川氏お得意の(滑り気味の)ユーモアミステリ短編集となっています。キャラクター造形は良くも悪くもドラマ的で、とっつきやすいところはあるのですが、それがミステリの完成度に直結しているようには見えないのがなんとも。マリィの存在意義が最後の最後で見えてくる辺りが、まさにそれ。良くも悪くも、軽め。


【○】「亀のひみつ」田中美穂

2013年05月06日 17:06

 著者が飼っている亀のサヨちゃんの、不思議でかわいい行動を中心に、 知られざる生態、種類、飼い方をたっぷり紹介した一冊。
 亀好きはもちろん、興味がない人もその不思議さに魅了され「亀のような生き方」がしたくなる!

 ということで、読みました。
 タイトルとは裏腹に、亀を家族に迎え入れるに当たっての入門書のような風合いを持った本。エッセイとしても読みやすく、分かりやすいです。我が家にもクサガメが一匹、いるのですが、成る程、本書を読んで勉強になることが色々ありました。一般にイメージされている「亀」と、現実、飼ってみると分かる亀との違いが実は沢山あって(本当に!)、本書のように改めてまとめられるのも結構貴重なのかもしれません。亀の気持ちが少しは分かったのかな、と小さな納得が得られる本。


【○+】「扼殺のロンド」小島正樹

2013年04月29日 20:43

 その事故車は工場の壁にぶつかってたわみ、ドアが開かなくなっていた。中には男女。女は腹を裂かれ、男は無傷のまま、死んでいた。直前にすれ違ったドライバーはふたりとも生きていたと証言、さらに男の驚くべき死因が判明して捜査は混迷を深めた。しかし事件は終わらない。第二、第三の事件が追い打ちをかける──。新世代トリックメーカーが放つ渾身の一撃!

 ということで、読みました。
 「事故車の中には腹を掻っ捌かれた女と意外な死因の男の死体」という冒頭の事件が凄いインパクトで、提示されるのが密室三連発! これ、きっちり合理的な解決なんて得られるのか、という興味だけでも読む価値があるんじゃないかと思う。こういう物理トリックメインみたいなミステリの弱さは、読者が巧く伏線を拾い切れないところで、しかし、この真相には納得せざるを得ないというか…、ドミノ倒しのように情景が繋がっていく終盤の謎解きは溜め息が零れます。バカミスもかくや、みたいな力技が積み上げられたトリックミステリだと思います。終盤の展開が少し急ぎ足で、肝心の「扼殺」の動機が弱いかな、とも。


【○+】「不可能楽園 〈蒼色館〉」倉阪鬼一郎

2013年04月23日 16:25

 若くして引退し、その後は一度も姿を見せず山形県に隠棲していた往年の名女優、美里織絵が死去。東京にある葬祭式場、蒼色館で告別式が営まれた。その最中に、織絵が暮らした山形県の屋敷には賊が押し入り、見習いの執事と家政婦を刺殺。さらに織絵の妹、浪江の孫を誘拐する! ところが、疑いのかかる関係者たちには鉄壁のアリバイがあった。不可能犯罪に秘められた真相は!?

 ということで、読みました。
 年に一度のバカミス祭。最早作者自らが公言してしまう、この恐るべきスタンスにより紡がれた、重厚に編み込まれた仕掛けの数々。不可解な誘拐事件の謎。なんというか、もう、「それ」を知らないと、はっきり言って下手な小説を読まされているみたいで、読んでいてイライラするくらいに「一生懸命書きました」感が延々と伝わってきて、これはまた仕掛けているな、と、ついついページの隅っこに目が行ってしまう。ところが作者も織り込み済みで、どうにかこうにか小説の事件の部分を成立させつつ、堂々と仕込みを見せる。今回の「暗号」もレベルが高いぞ!
 あれ(オウム)とあれ(伝書バト)は直ぐに分かってしまったため(そのくせ誘拐事件のトリックには騙されるという)、最後のあれには度肝を抜いた。凄い数のトリックを仕込んでいやがる、全く! あれとあれだけで終わってしまうには今回は軽過ぎるな、と思っていたため、これはもう強烈なギミック。上小野田警部、最後の事件。この仕様ではシリーズも終わらせるしかないやね。
 倉阪氏、今年もお疲れ様!


【◎】「デザインあ 解散!」岡崎智弘

2013年04月18日 16:21

 2012年グッドデザイン賞大賞も受賞した、NHK Eテレの人気番組『デザインあ』。こどもたちの未来をハッピーにする「デザイン的思考」を育むテレビ番組です。「解散!」は『デザインあ』の人気コーナー。身の回りのさまざまなモノが分解され、その構造が見えるユニークなコマ撮りアニメ。その「解散!」が、ビジュアル絵本になって登場! 「ブロッコリー」や「しめじ」、「ランドセル」から「将棋」まで、たっぷり17個が解散!します。

 ということで、読みました。
 あはは、こりゃあ面白いわ。「身近にあるものを可能な限り分解する」。これ子供の憧れの行為。でもその児戯をきっちりこなすと、途端にアートめいてくる。バラバラにされた果物の果肉と種と皮が整然と並んだ絵は、まるで設計図のよう。それを本書では無数の「パーツ」が「解散」する形でもって、少しずつ別れていくような手法で見せているから、なおのこと面白い。凄く手間暇掛かった作品集だと思います。でもギリギリの難しさで真似をしたくなってしまう。
 自動車とかパソコンとかでやってくれないかなあ…。


【○】「マグダラで眠れ」支倉凍砂

2013年04月17日 16:14

 人々が新たなる技術を求め、異教徒の住む地へ領土を広げようとしている時代。錬金術師の青年クースラは、研究の過程で教会に背く行動を取ったとして、昔なじみの錬金術師ウェランドと共に、戦争の前線の町グルベッティの工房に送られることになる。グルベッティの町で、クースラたちは前任の錬金術師が謎の死を遂げたことを知る。そして辿り着いた工房では、フェネシスと名乗る白い修道女が二人を待ち受けていた。彼女の目的は、クースラたちの“監視”だというが―?眠らない錬金術師クースラと白い修道女フェネシスが紡ぐ、その「先」の世界を目指すファンタジー、開幕。

 ということで、読みました。
 前作では貨幣と経済をファンタジーに堂々と絡めて旅物語を設えてみせた支倉氏が、今回は錬金術氏の物語を描く。蓋を開けてみれば、大真面目に「錬金」について語られていて、魔法はなくとも面白いことをファンタジーでまた始めたな、という印象。如何せん、登場人物のあり様というか、設定が先行して、物語が開幕しただけという印象が強い。本筋が見えず、なかなか盛り上がらない。
 昨今珍しい、最悪の登場シーンのヒロインは、申し訳ないけれど読者としては大きな笑いどころでした。しかし生い立ちを聞けば、「あれくらいのことで」とも思う。余程辱めを受けながら生きながらえてきたような過去を持っているはず。


【◎】「本格ミステリ鑑賞術」福井健太

2013年04月10日 20:27

 フェアとアンフェアの境目はどこにあるのか、作者の仕掛けた伏線やミスディレクションをどのように評価すればよいのか、叙述トリックは本格ミステリ史のなかでどのように位置づけられるのか―エドガー・アラン・ポオや東野圭吾など、古今東西の傑作を具体例に挙げて、知れば必ず本格ミステリの面白さが倍増する鑑賞術を、余すところなく紹介する、類例のないガイドブック。

 ということで、読みました。
 古今東西のミステリを様々な観点から分析し、ミステリの楽しみ方を紐解いた本。ミステリを普段あまり読まない人にはあまり薦めたくはない本ですね。というのも古典から近著に至るまでの名作の多くの真相(つまりネタバレ)に触れつつ論じられているので、贅沢というか勿体無いというか…、そうしないことにはミステリの分類などしようがないのですけれど。一方で、良質なミステリという奴は、トリックが割れてもなお、読んで(再読して)面白いものが多数あるのも事実。フェアネスや伏線の面白さがそれに当たるのですが、これも一種の鑑賞術。


【○+】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計

2013年04月04日 21:23

 トレーニング次第で、誰でも"発想体質"になれる! 新潮文庫「Yonda?」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、「日テレ営業中」などの名コピーを生み出した、論理派コピーライター谷山雅計。彼が20年以上実践してきた「発想体質」になるための31のトレーニング法。

 ということで、読みました。
 以前から読みたかった、言葉を扱うプロの方が書いた「コピー作りの指南書」。と呼ぶと大袈裟ですが、著者本人にとってはこれが当たり前のこととして仕事をしている、思考のプロセスを丁寧に綴った本。
 目次のページを開いたときに、「成る程、コピーライターの本だ」となんとなく感じてしまうのが、いきなり凄いですね。第一印象で見る者の関心を引き付けるのは、やはり本職のなせる業ということだろうか。
 本編も非常に読みやすく(単純にテキストの量が少ないこともありますが、読んでいて「今、何のことについて話しているのか」が分かりやすいです)、少なくとも想定されている、「コピー」をライティングすることを目的に、谷山氏の「広告コピーを作成する手法」に対する思考をトレースするのには相当役立つのではと思われます。
 抽象と具体については、色々な「創作家」が指摘するところなので、勉強になります。


【○】「キケン」有川浩

2013年04月03日 21:18

 成南電気工科大学機械制御研究部略称「機研」。彼らの巻き起こす、およそ人間の所行とは思えない数々の事件から、周りからは畏怖と慄きをもって、キケン=危険、と呼び恐れられていた。これは、その伝説的黄金時代を描いた物語である。

 ということで、読みました。
 すっげえ。タイトルが全てを物語っている。アブナイヤツラ、ということですよ、つまり。しかしまあ、物凄く「遊んでいる」表紙のデザインですね。このインパクトでは内容がとても普通に思えてしまう。不思議。
 さて、本書は男子校か、というような工科大のお話。勢いのままストレートに突っ走り続けて物語の世界を駆け抜けているみたいな雰囲気で、あまり物語物語していないというか、タイトルにもなっている「機研」にまつわるエピソードが物足りないというか、本書の大部分は大学生の日常の面白いところを切り取って見せたみたいな…、文化祭の屋台の話は結構面白かったのだけれど、あの面子じゃないと面白くならなかったのかというとそういうことはなくて。まあ、こういうドンパチ(笑)に「日常風景」はあまり期待してはいけませんね。
 最後の話がちょっと巧過ぎるだろ、と突っ込みたくなるのですが、…青春だな。悪い意味で。


【○】「ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔」三上延

2013年04月02日 21:12

 珍しい古書に関係する、特別な相談―謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その家には驚くべきものが待っていた。稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。そして、深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが―。

 ということで、読みました。
 これまでとはなんとなく雰囲気が違うな、と誰もが思うに違いない、シリーズ初長編。ロジックがー、トリックがー、という難しい顔をして読むような本ではないことを差し引いて、江戸川乱歩が全編に渡って「事件」の軸となっているため、コアなミステリファンも色々と知ることがあって楽しい。物語の中での謎解きも、シリーズならではのマニアックなものから、如何にもライトミステリな仕掛けまで多数。「ライトノベル」の形をした「小説」のひとつとして数えられるシリーズの所以。
 しかし全てを掻っ攫っていくのはやはり、栞子さんの母、智恵子さんの、なんというか女帝のような上から目線が冴え過ぎていて怖いです。思えば、かなり以前から警鐘は鳴り続けていた。彼女が姿を現した理由、すなわち、自分と同じように古書に対する知識の才能を開花させた娘と共に仕事がしたい。これほどストレートな根拠は他にはない。その思い自体に悪意があると言えるだろうか。解答は、そして回答は、次回以降。


【○】「IDEA HACKS! 今日スグ役立つ仕事のコツと習慣」原尻淳一・小山龍介

2013年03月13日 20:03

 IT関連業者を中心に、アメリカのインターネットに端を発して、日本でも盛り上がりを見せる「Life Hacks」(効率よく仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを向上させようとする取り組み)の日本版企画。「スピーディに、楽して、効率よく」仕事をこなすノウハウを、Tips(小ネタ)形式で紹介する本。「発想法」「情報整理術」「意志決定」「パソコン仕事術」等々のジャンルの仕事にすぐ役立つノウハウのうち、実際に使われているものを実例を交えて分かりやすく解説する。

 ということで、読みました。
 根本的に自分が今就いている仕事とは知識や技術の用い方が異なるもので、こういうビジネス書のようなものはどれくらい役立つのだろう、と眉唾で読み始めたのですが、成る程、こういう「アイデア」の詰まった本は社会人なら誰が読んでも面白がれるものです。「深夜の残業を止めて、夜は9時に寝てしまって、早朝の会社で仕事をしよう! 他に邪魔者はいないし、電話も掛かってこないし、はかどるぞ!」こういう当たり前のことを引っ繰り返すような、思い切った行動が取れるかどうかなんだよなあ。そうしてアイデアを実用に転換出来るか否か。


【○+】「虚像の道化師 ガリレオ 7」東野圭吾

2012年12月13日 17:27

 指一本触れずに転落死させる術、他人には聴こえない囁き、女優が仕組んだ罠…刑事はさらに不可解な謎を抱え、あの研究室のドアを叩く。

 ということで、読みました。
 物凄く安定しているなあ、このシリーズ。本書は短編集ですが、単なるパズラーにならずに、きちんとオーソドックスな社会派スタイルも兼ね備えている昨今の東野氏の良い面が出てますよね。トリック一本で読ませるのもアリだけど、湯川の意外な人情味を垣間見えるのも面白い。「物理的なトリック」を本気でやってしまうのがこのシリーズの醍醐味で、初期よりも幾分かは分かりやすくなっている…だろうか。物理、というよりも、科学的にトリックが証明可能か、というのが主眼だから、良いのでしょう。
 1話目の「チン」っぷりには舌を巻いた。


【○+】「禁断の魔術 ガリレオ8」東野圭吾

2012年12月06日 20:30

 『虚像の道化師 ガリレオ7』を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはもうない、ラストを飾るにふさわしい出来映えだ、と思っていた著者が、「小説の神様というやつは、私が想像していた以上に気まぐれのようです。そのことをたっぷりと思い知らされた結果が、『禁断の魔術』ということになります」と語る最新刊。「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の4編収録。ガリレオ短編の最高峰登場。

 ということで、読みました。
 物理トリックというか、科学トリックというか。犯罪現場の不可解な現象を理論的に解明することに特化していた初期の作風に比べれば、昨今の「ガリレオ」シリーズは、随分と人間を描くことを重視しているように思う。本作においても、その点を突き詰めて言えば、作中の事件における謎など脇へ置いておいても十分に読ませる物語が幾つも仕掛けられていて、この人物はこの事件のこの部分に繋がっているのだ、という東野節の真骨頂がここにも、という感じです。だから物足りないと言えば物足りない、しかし湯川の人情味が伺える貴重な短編集。


【◎◎】「ブラッド・スクーパ」森博嗣

2012年11月28日 23:06

 立ち寄った村で用心棒を乞われるゼン。気乗りせず、一度は断る彼だったが……。
 若き侍はなにゆえに剣を抜くのか? シリーズ2作目。

 ということで、読みました。
 森博嗣の書く時代小説。前作に続いて、凄く面白かった。もう少しで読み終わる、というときに、あと500ページくらいこのまま話が続いてくれたらいいのに、と本気で思ってしまった。こんなに読み終わるのが名残惜しい読書も久しぶりでした。
 とても静かな活劇、というスタンスは同じ。ゼンに与える様々な刺激が見ていて楽しい。思慮深いサムライ、というのは割とよく描かれる題材なのだけれど、若くして論理的に(言い換えれば、横文字はないけれど「科学的に」)物事を突き詰めて考えるのが当然となっている若きサムライ、となると、そうはお目に掛かれない。とにかくまず考えてしまう、というキャラクターは、意外に多くない。理屈っぽい、とゼン本人も自覚しているのだけれど、これは多分、過剰に理性的なのだ。森氏の書くキャラクターに多く、冷酷なまでに理性的な人物が突出している。でも泣き、笑いもする。本書のゼンも、他の人とはちょっと違う、ということなのだ。でもそれを詳しく文字にすると、変だ、ということになってしまう。だから本書は一人称語りになっているのかもしれない、とふと思った。微笑ましいまでの彼の世間知らずさは、現代でいうところの常識論に繋がっていきそうで興味深い。
 生き死にの数が前作に比べて多くなっている。必然的に、ゼンが刀を振るう頻度も多く、誰かが血を流す場面も多い。生と死の狭間でサムライが思うところ…、本書の死生観は、本質を突き過ぎている。それでいて、ちっとも堅苦しくないのが不思議。


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【○】「ジグβは神ですか」森博嗣

2012年11月22日 23:31

 芸術家たちが自給自足の生活を営む宗教施設・美之里。夏休みを利用しそこを訪れた加部谷恵美たちは、調査のため足を運んでいた旧知の探偵と再会を果たす。そんななか、芸術家の一人が全裸で棺に入れられ、ラッピングを施された状態で殺されているのが発見される。見え隠れするギリシャ文字「β」と、あの天才博士の影。萌絵が、紅子が、椙田が、時間を超えて交叉する―。ついに姿を現した天才博士。Gシリーズ最大の衝撃。惹かれ合う森ミステリィ。

 ということで、読みました。
 4年ぶりのシリーズ続巻。棺の中にラッピングされた死体、という懸案はあるが、それは本書の核ではない。「こう書いておけば一応納得出来るでしょう?」と言わんばかりの謎と謎解き(読者の何割がこの結末に心から納得するのか)。このシリーズがアンチミステリを描いているのはこれまでの傾向からも明らかで、けれどまあ、恐らく読者の多くは織り込み済みでしょう。それよりも登場人物の遣り取りが終始、読んでいて面白く、それこそが読者が楽しむべき小説の(少なくとも本書にとっての)本質的なものなのかしら、と思ったら、なんだか虚しくなってしまいました。本当、アンチミステリだわ。
 あの天才博士の登場(の予感)だけで、事件などどうでもよくなってしまう(!)カリスマ性の恐ろしさが、そっくりそのまま本作のキモになっている感じがして恐ろしいです。いよいよ時を跨いで展開を始めた今後に注目。


【○+】「彼女が追ってくる」石持浅海

2012年11月19日 21:10

 わたしは、彼女に勝ったはずだ。それなのに、なぜ…”中条夏子は、かつての同僚で親友だった黒羽姫乃を刺殺した。舞台は、旧知の経営者らが集まる「箱根会」の夜。愛した男の命を奪った女の抹殺は、正当な行為だと信じて。完璧な証拠隠滅。夏子には捜査から逃れられる自信があった。さらに、死体の握る“カフスボタン”が疑いを予想外の人物に向けた。死の直前にとった被害者の行動が呼ぶ、小さな不協和音。平静を装う夏子を、参加者の一人である碓氷優佳が見つめていた。やがて浮かぶ、旧友の思いがけない素顔とは。

 ということで、読みました。
 探偵の直感に頼るよりは、事件が起きた場の皆で綿密なまでのディスカスの末に真相が導き出される、という印象が強いのが石持ミステリ。今作も(殺された被害者の部屋に皆が集った形で行われるという、やっぱりズレた倫理観の元)小さな手掛かりを元に、じっくり過ぎるくらいの推論が続くので、ちょっとじれったいほど。実際、本当に小さな手掛かりなのだけれど、論理的な推理を続けていると行き詰ってしまうもどかしさはたまらない。「カフスボタンの謎」くらいでこんなに推理シーンが続くのかよ。というくらいに可能性の検討は虱潰し。本書のキモはほぼ、その一転突破に置かれているため、お腹いっぱい。
 本作は倒叙モノで犯人の視点により綴られているので、「カフスボタンの謎」そのものがどうして成立してしまうのかが謎、という大枠の囲みが面白く、またその真相が判明するまでは混乱寸前の違和感が物凄いのですが、探偵役の碓氷優佳のロジックは頭ひとつ抜きん出ている。というか斜め上! そういう方向で真相がやってくるとは。最後の最後まで油断出来ない女たちの戦い。最終ページで判明すること、これこそが真の真相。すなわち、意を決し、殺人という行為に及び、警察の捜査から逃れるべく動き出そうとしていた夏子は、優佳に負けるだけならばまだしも、そもそも、「箱根会」の会場に到着した時点で、最初から姫乃に負けていた…、負けることが決まっていた、ということ。そして或いは、優佳は、そのことにすら気づいていたのかもしれない、ということ…。


【○+】「新装版 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」麻耶雄嵩

2012年11月15日 23:19

 首なし死体、密室、蘇る、死者、見立て殺人……。京都近郊に経つヨーロッパ中世の古城を彷彿させるゴチック調の館・蒼鴉城を「私」が訪れたとき、惨劇の幕はすでに切って落とされていた。事件の最中、満を持して登場するメルカトル鮎。そして迎える壮絶な結末! ミステリー界を騒然とさせた衝撃のデビュー作を新装版にて

 ということで、読みました。
 新装版ということで物凄く久々に再読。文章の読みにくさには手を入れていないとのことだったので覚悟はしていたのですが、意外にもさくさくと読める。香月と夕顔の会話は非常に醒めてて面白いですね。しかしこの事件の犯人はあまりにも暗躍している。なるほど、これぞ「新本格ミステリ」に更なる一石を投じる切っ掛けとなった舞台装置、お膳立て、探偵と犯人。何もかもが「ミステリのため」に存在している。そのくせ、本作は明らかに通常のミステリの定石を排したアンチミステリなのだから、敷居が高いのも仕方がないのかもしれない。いやいや、事件が解決しないということではないですよ。
 叙情を乗せた物語でも、冷酷なパズルでもなく、ただミステリのためにある、神の七日間の話。浮世離れの城で起きる大虐殺、翻弄と喚起を繰り返す探偵たち。土壇場で披露される、児戯に見紛う驚愕の大トリック、そしてカタストロフィ。真相など何処にも存在しないのかもしれない、しかし真実は最後に密やかに告げられる。過剰な装飾は延々と漆黒に迫り、彩りはグロテスクなまでに。


【○】「第四の男」石崎幸二

2012年11月13日 20:52

 お嬢様学校・櫻藍女子学院の生徒が、見知らぬ車に乗せられ拉致される!が、彼女は途中で隙を見て逃げ出し無事保護された。その生徒の名は星山玲奈、大手食品メーカー会長の孫で、実母は十数年前に殺害されていた…。後日、警視総監宛に玲奈を攫ったという犯人グループより「別の女子高生を誘拐した…」との脅迫状が届く!絡み合う3つの事件!その真相とは。

 ということで、読みました。
 待ってました! 孤島、そしてDNA! そうでなくては始まらないし終わらない、石崎ミステリ! 相変わらず漫才の失敗作みたいな、女子高生ふたりが中年会社員と織り成す漫才が楽しい、会話の多いミステリですが、さくさく読めるのでストレスにはなりません。というかこれを面白がってなんぼのシリーズだと思うので、ここで好き嫌いが分かれちゃうのは勿体無いと思う…。逆に彼女らの漫才以外は事件の事実を淡々と綴っているのだと解釈すれば、ミステリとしての純度は上がるのでは、とも思う。これも新しい伏線の張り方なのか…。
 作中の誘拐事件の真相そのものは衝撃的とはいかないのですが、16年前の殺人事件と重ねることによりなかなかの意外性。この真犯人は全くのノーマークだった(「第四の男」は男ではなく女だった? というミスディレクションはベタながら面白かったです)。しつこいまでにDNA鑑定に関するトリックを続けざまに製作する姿勢には頭が下がりますね。今回もDNAに関するトリックを仕掛けてくるに違いない、と読者も構えてしまうので。こういった科学知識に関するトリックはどうしても専門的になってしまうので、読者の興味を維持するのが非常に難しいと思うのです。下手をすると作者の知識のひけらかしで終わってしまうこともあるから。
 ということで、次回にも期待します。




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