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031

2011年01月31日 00:01

 アカザから、電子メールが届いた。
 アカザ、という名前は、僕以外の者にとっては、恐らくどうでもいい名前だ。
 けれども、僕の脳裏からは、恐らく、生涯、消えることはないであろう、ひとりの人物の名。
 電子メールなど、寄越すような相手ではなかった。
 否…、そもそも、彼は、僕に、メールなど送れるわけがないのだ。
 経緯など、やはりどうでもいい。しかし、そんな事実を裏切る事実が、ここにある。
 薄暗い部屋の中で、ぼんやりと浮かび上がるディスプレイの光。
 貴方にも、そんな相手がいないか?
 最早、記憶から抹消してしまいたい相手が。
 そうであるほどに、克明に、過去にこびりついてしまう幻影が。
 僕の手の動きに同調して、画面の中で揺れ動くカーソルが、件名が書かれていない一通のメールを開いて内容を表示するべきか、それとも、このままなかったことにして消去してしまうべきか、迷っている。僕は、迷っている。過去の記憶は今、現実に起きていることとは乖離させて、今、考えるべきことから一所懸命、必死に、遠ざけようとしている。同時に、どうしようもなく抗いがたい欲求、衝動、願望が湧き上がるのを止められない、堪えられない、抑えきれない。どうしようもないのだ、それは。かつての自分がどうしようもなかったことを、この世で一番よく分かっているのは、この僕だ。そして、この世で二番目に分かっていた、理解してたのは、アカザなのだ、きっと。僕はそう確信している。そう…、今でも、そう、思っているのだ。未だに、そう信じているのだ。彼は僕の理解者であったと。
 そのメールに、生の彼のメッセージが含まれているとは、とても僕には思えない。
 けれど、それは遺物でもないはずだ。ただ、言葉が並べられている、というものではないはずなのだ。
 僕たちは、かつて、バラバラになった。それきりだ。
 そのまま、独立したピースでいるままであることが、考え得る最高の幸せの形であったはずだ。
 それを彼は、或いは僕は、否定しようというのか。それが得策ではないと分かった上で。
 過去は、現実ではない。当たり前のこと。しかし過去にとって、現実は、未来と同義ではないのか?
 恐らく、僕は、そう問われている。
 アカザから届いたメール。このメールの中身は、空なのではないかと、僕は考えている。彼が、僕に、そんな独白めいたメッセージなどを送るはずがないからだ。だから、このメールはフェイクであるはずなのだ。そうでなければいけない。僕と彼が、僕と彼である以上、そうであるべきなのだ。しかし、その不文律を敢えて破ることが出来るのが、彼という人間だった。だった…、そう、それも、過去の話だ。だから、現実、このメールがアカザ本人の出自である必要性が、僕にはないというのもそういうことなのだ。彼が僕に何かを伝えたいのであるのならば、直に耳元で囁けばいいだけのこと。人生最後の戯言を染み込ませるように。
 過去と決別する必要はない。過去というものなど、ここにはない。だから、このメールは、読む必要はない。
 その代わりに、僕にはするべきことがひとつ、出来たようだ。
 僕はパソコンの電源を落とし、そして、行動をすることにする。
 アカザから届いたメール。過去の遺物を消去する勇気を持てないまま。

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【◎】「建てどき」藤原和博

2011年01月30日 21:11

 長屋→アパート→マンション→建て売り→ロンドン・パリ生活を経た“お宅通”ビジネスマンが、「住宅の常識」に挑んで実現した家「住み心地」はもちろん「生き心地」もよくなる秘策、教えます。

 ということで、読みました。
 社会的にも経済的にも豊かになった現代の日本では、多くの人が美味しいものを食べ、煌びやかに着飾って日々を過ごしている。衣食にこだわりを持つ、或いは、全くの素人であっても、通ぶって様々に周囲に主張したくなる流行の色がある。でも、ちょっと待って? 衣食ときて、住はどうなの? この日本、この社会で生活していく中で、自分の住む場所について、誰もがもっと真剣に考えるべきじゃない? そんな「住の素人」である著者が、自分の本当に住むべき家、住みたい家について、じっくりじっくり煮詰めて実現していった本。
 一体どれくらいの人が、これくらい本気になって家を建てることに対して考えているのだろう、考えを持っているのだろう、とうならずにはいられない。聞いてみれば当たり前のことばかりのトピックスで、尚更、目からウロコ。


030

2011年01月30日 00:01

 夕飯を食ってネットをしてたら、鍵を掛け忘れていたらしい玄関から訪問者。
「はいはい、ただいまー」
 玄関から一直線に、鳥坂が部屋に入って来た。
「おい、お前…、うわッ、顔真っ赤だぞ」
 ほんの数歩で千鳥足と分かる鳥坂は、パソコンデスクの横の僕の足元に座り込む。
「飲んでますよー。飲んでますが何か?」
 というか、殆どへたり込む、といった感じだったので、普通ではないと案じた。
 その息は、はっきり言って、臭い。
 僕は酒飲みではないのだが、はっきり言って、こうまで匂うと『嫌いな匂い』だ。
「何かじゃねえよ。べろんべろんじゃねえか」
「べろんべろんですよーだ」
 悪態をついてやったが、鳥坂はニコニコしている。
「よーだじゃねえ。くせえなあ。こんな時間にどんだけ飲んでんだよ」
「だってえ」
 甘ったれた口調で言い訳をしようとするので、取り敢えず僕はキッチンへと立った。
「だってじゃねえって。ほら水飲め水」
「ありがとーう」
 コップに水道水を汲んできてやると、彼は両手で抱えて飲み干した。
「酔っ払いだなあ全く」
「ああ、美味しかった。水って超美味いよねー」
 ニコニコしている。僕は適当に相槌を打ってやる。
「はいはい、美味い美味い」
「冬の水ってさ、夏の水より美味いよね。なんでだろうねえ」
「さあな。冷たいからじゃねえの」
「あはッ、冷たいって、お前! 冷たいからって! あはははッ」
 唐突に彼は爆笑した。何が何やら分からない。
 あまりにもステレオタイプの酔っ払いで、介抱の仕様もないのだが、どうしたものか。
「なんだよ、何が可笑しい」
「だって! 冷たい! 当たり前じゃん! 冷たい!」
「黙れ! 五月蝿い!」
 余程、引っ叩いてやろうかと思ったが、喧嘩にでもなったら詰まらないのでやめておく。
「黙れ? 黙るよ。黙ってもいいけどさ」
「なんだよ」
 上目遣いで鳥坂は請うた。
「ついでに、煙草も頂戴」
「ついで。はあ、そうかい」
 呆れながらも僕は彼に煙草を分けてやる。
「火も欲しい?」
 多分そうなるだろうな、と訊いてみたら、
「火! 当たり前じゃん! 食べるんじゃないってば! 莫ッ迦だなあ、お前!」
 あっはははは、と、またひとしきり、たがが外れたように笑う。酔っ払いだ。
「はいはい、分かったから。ほら、火」
「ありがと。ただいま」
 ああ、煙草美味い、と煙を吐きながら彼が嬉しそうに言うので、
「おかえり」
 一応、僕は答えておいた。
 別に、ここは鳥坂の家ではないのだが。
 ただいまと言われたら、おかえりと返すのは礼儀だろう。別に僕は酔ってはいない。
 別に普段から、お互いの家に遊びに行くような仲でもないのだ、実際。
 そういう友人のひとりやふたり、誰にだっていると思う。鳥坂も、そんなひとりだ。
 いつもコイツは、自分勝手だ。僕が相手だと、それが特に顕著だと思う。
 もういつものことで、慣れてしまったことだが、面倒見が良いのにも困ったものである。
 自分で言うようなことでもないか。案外、僕も、誰かにとっては、そんな存在かもしれない。

029

2011年01月29日 00:01

けいたい から うぷ する てすと です
けいたい だから なのか うまく へんかん できません
よみ にくく て すみません

うょき けだは そぱんこ が かついえな ひ でのな
いまにち こしうん してるい じき を
るめや もけにわ かいいなでの んがばりまたし

あした から は また きちんと
ぱそこん から こうしん します ので
よみ にくく ない と おもいます
よろしく おねがい します

とりとめがない

2011年01月28日 22:57

 こんにちは、こんばんは。
 日刊ショートショートみたいな感じのゆるーい創作「366デイズ」が続いています。これまでとは雰囲気が違う、全然、日記ブログではない2011年の「ミス不。」となっております。やる気がないわけではありませんよ。ありますよ。ちゃんと毎日書いてるし。たまに、調子が良くて3日分とか書けちゃう日もあるので、少し先行して書いてます。締め切りに追われない、いい傾向です。
 今年はそういう趣向でやってみよう、というテストがたまたま、1ヶ月続いている、というだけの話だと思ってください。始めてしまった以上、3日坊主で終わってしまうのは面白くない、というのは最初の1週間くらいの話で、それ以降はなんとなく続けていられるものだと思います。かえって、1ヶ月とか、キリのいい区切りの方が危ない。そこで中途半端な達成感を持ってしまうと、非常にリスクが高くなると思われますので、少しストックを作っておこうと創作意欲を吐き出したりしなかったり。創作意欲を吐き出したら良くないのでは。
 ちょっと風邪気味になった日もありましたが、それはただの気のせいだったり、ちょっと花粉症気味にもなったときがありましたが、それもただの気のせいだったりしました。いつの間に治ってしまったんだろう、花粉症。それも気のせいかもしれません。多くの病は気から来ていますが、そうでないものの方が多いというのも事実。真実は必ずしもひとつでなければいけないというわけでもないと思います。

 そんな感じで、いつまでもダラダラと文を書ける症候群に陥っている最近の祐樹一依でした。
 もうちょっと頑張れそうです。これも口癖だな。

028

2011年01月28日 00:01

「先輩、ちょっと休憩しましょう。コーヒー淹れますね」
「はいよ。あー…、疲れたなあ」
「もう年度末調整が始まってますもんね」
「食欲も進まねェよ、全く」
「ホントですよね」
「こうやってさ、コーヒーとお茶菓子くらいで飯が済めば簡単で楽なんだけどさあ」
「そうですねえ。でももうそんな年じゃないでしょう、お互い」
「いや、それがさ、俺、結構食うのよ、菓子類とか」
「チョコとか?」
「そうそう、食うよ、甘党なの」
「へえ。男の人の甘党って、珍しいですね」
「いや、そうでもないぞ。男だって甘いものは別腹だと思う」
「それは先輩だけでしょうよ」
「甘いもの…、甘いものかあ」
「なんですか」
「疲れたときには甘いものだよね」
「何なんですか」
「そう言ってくれた人が、かつていてな」
「はあ」
「別に疲れたとか疲れてないとか、一々報告してたわけじゃないんだけどな」
「はあ」
「ポケットからいつでも飴玉やらガムやらくれたんだ」
「誰ですか、それ」
「昔の同僚」
「女の人ですか、それ」
「そうだよ。そうなんだよ」
「いいなあ。なんだかいいですねえ」
「そうか? そういうもんか? 変だろ、ちょっと」
「何ですか先輩。甘いものに飢えてるんですか」
「さあなあ。何なんだかなあ」
「未練があるんですか、その人に。おやつを分けてもらったくらいで」
「言うなよ、そんな風に。もう昔の話だよ」
「仕様がない人だなあ。ほら、僕のキットカットあげますよ」
「いらねえよ」

027

2011年01月27日 00:01

 誰かが身体を揺り動かすので、目が覚めた。
 目を開くと、そこには何故か男の姿があった。
「おはようございます」
 一瞬、ぎょっとしたのだが、聞き覚えのあるその落ち着いたトーンで、全てを思い出す。
 幸村だ。私の経営するカフェの、パティシエ兼ギャルソンである。
 昨夜は、店の裏にある私の家で泊まっていたのだった。
 細身の青年は、殆ど表面に浮かんでいない顔の色で、私の機嫌を伺っていた。
「うん…、ああ…、おはよう」
 元々、それほど朝には強くない体質だが、重ねて冬の朝ということもあって、頭がなかなか働かない。
 コーヒーが欲しいな、と思いながら、起き出すことにする。
「もう、随分明るいですが、大丈夫ですか」
「いや…、どうかな。キャスタは」
「起きています。起こされました」
「何処にいる?」
「ここに」
 そう言う彼は、成る程、小さな毛玉のようなものを抱えている。猫だ。
「…ああそう」
 私の飼い猫である。幸村は昨夜が初対面のはずだったのだが、一晩中、ふたりで毛布に包まって一緒だったわけか。
 昨夜と変わらない服装の彼は、ソファに敷いた毛布で寝たはずだが、何処も乱れた様子がない。
 寝相は良いようだ…、最も、そうでない彼の様子を想像出来ないのだが。
「私ときみとは、どうやら違う種類の人間なようだね」
 私がさも苦言を呈するように言うと、幸村は少し困ったような顔をして首を傾げてみせた。
「先程、管理の方に電話を。手配してくださるそうです」
 突然、話が飛んだ。
「管理?」
「鍵の件です」
 そう言われて思い出す。
「ああ、大家さんね」
「はい」
 随分早くに電話したものだな、と思っていると、
「ところで、大丈夫なのですか」
「何がだい」
「もう、時間では」
「何の…、うわッ」
 告げられて、時計を見て、私は小さく跳ねた。とうに出勤していなければいけない時間だ。
 つまり、遅刻だ。
「どうして早くに起こしてくれなかったんだい、幸村くんッ」
「いえ…、僕は」
「低血圧だから寝坊した?」
「いいえ、今日は、お休みの日でしたので」
 あわあわと服を取り出しながら部下のスケジュールに頓着しない自分を呪う。
「そうだったっけ?」
「はい」
 大真面目にイエスと答える幸村を、しかし叱ることも出来ずに私は朝の準備をすることにする。
 別段、朝一番に店のマスターである私が切り盛りしないと客が回らないというわけでもないのだが、なにせ、自宅が店の裏にあるという事実が後ろめたくなってしまう。
「ゆ、幸村くん、お願いしていいかな」
「なんですか」
 洗面所とリビングを往復しながら、私は彼に請うた。
「コーヒー、淹れてもらってもいいかな?」
「はい」
 キャスタを抱いたまま、彼はキッチンに向かった。
 何なのだろう、本当に感情の起伏がないせいで、行動が酷くゆったりして見える。
 その間に、御坂に電話することにしよう。きっと、今日も彼は早くに出てきているはずだ。そう思って携帯電話の画面を見ようとすると、電源が入らない。どうやら、夜のうちに電池が切れたようだ。慌てて充電器に繋ぐと、着信が3件入っている。これはどうもよろしくない、そんな予感がして、幸村に訊いてみる。
「幸村くん、きみのケータイに着信はあった?」
「いいえ」
 すげない返事である。
 しかし今日に限って、これはないだろう…、そう思った刹那、玄関からチャイムの音が鳴った。
 これは御坂が迎えに来たかな、そう思ってドアを開けると、
「あらマスター、おはようございます。起きたばっかり、って感じね」
「姉さ…、オーナー。…おはようございます。起きたばっかりです」
 そこには私の店のオーナーであるところの姉が、にっこりと微笑んで。
 すらりとしたパンツスーツで仁王立ちしているのだった。
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026

2011年01月26日 00:01

 カフェのエントランスを入ると、既に御坂が仕事着で掃除を始めていた。
「おはよう」
 声を掛けて、壁の時計を見ると、まだ出勤時間には少しだけ、早い。
「おはようございます、オーナー」
「早いねえ、きみは、ホントに」
 どうやら、まだ彼しか出勤してきてはいないようだ。
 まさか掃除好きな奴だったか、と冗談でも思ってしまった。
 掃除好きと綺麗好きは、若干、性質が違う。彼の場合は、後者だ。
「だって仕事ですもん、俺の」
 掃除当番、という言葉が意外に似つかわしい。
「ワーカーホリックだったのか、きみは」
「なんですか、それ。ワーカーホリック?」
 モップを動かす手を止めて、彼は私を見遣った。
「仕事中毒のこと。仕事に打ち込むあまりに、家庭や自身の健康などを犠牲とするような状態」
「それって、当たり前のことじゃあないんですか? 誰だって、生活をしていくため、金を稼ぐために仕事してるんだし。多少の犠牲は必要だと思うけどなあ。そのための対価なわけでしょう、金って」
「現実主義…、というか、現物主義なんだねえ、御坂は」
「生言わないでくださいよ」
「滅私奉公って奴なのかね、御坂の仕事に対する考え方は」
「うーん…、どうなんでしょうね。この仕事も好きだし、楽しいと思いますよ。一凪も幸村も良い奴だし」
 彼は同僚のふたりの名前を口にした。御坂と同じ、料理人兼ギャルソンである。
「おや、珍しい。御坂の口から、そんなことを聞けるとは。僥倖、僥倖」
 普段、必要以上に冷静な人間だと思っていたので、そんな思い遣りのある言葉が聞けるとは。
「ひとりで納得しないでくださいよ」
 憮然とする御坂を横目に、私は事務所に向かうことにした。店を出て、隣である。
「床、拭いてくれたね?」
「拭きましたよ、モップ完了」
「じゃあ、一凪とかが来たら、エントランスの掃き出しもお願いね」
「了解です…、オーナー」
「うん?」
「オーナーは、違うんですか? 何のために、この店をやってるんですか?」
 まだ、御坂の中では先程の会話は終わっていなかったらしい。
「趣味だと思う?」
 私は端的に答え、彼は首を振った。
「い…、いいえ…、そこまでは、流石に、幾らなんでも」
「でしょう? 世の中の殆どの人は、それくらい曖昧な理由で働いてるんだと思うけれどな、私は」
 今日もよろしく、と声を掛けて、私は店を出た。
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【◎】「攪乱者」石持浅海

2011年01月25日 21:05

 コードネーム『久米』『輪島』『宮古』のテロリスト三人。彼らは一般人の仮面をかぶりながら、政府転覆をめざすテロ組織の一員である。組織は、暴力や流血によらない方法で現政府への不信感を国民に抱かせようとしていた。彼らに下された任務は、組織が用意したレモン三個をスーパーのレモン売り場に置いてくるなど、一見奇妙なものであった。任務の真の目的とは何か。優秀な三人の遂行ぶりが引き起こす思わぬ結果とは。テロ組織の正体は。そして彼らの運命を翻弄していく第四の人物の正体は―。

 ということで、読みました。
 「無血主義のテロリスト」が論理的には存在し得る、ということを描いている点で、本作が社会派ミステリとしての問題作であると言うことが出来ると思います…、と考えかけて、そうでもないか、と思う。いわゆる「常識」の範囲を食み出したところの倫理観を問うた作品を数多く送り出している石持氏なのですが、そんな感覚は本書にも顕在。ストレートに考えれば、あまりにもやっていることがまどろっこしくて、凡庸な人間の集まりである現代の日本の社会、そして国家はこんな「テロ」に対して早々に危機感を抱いてくれるのか? と真面目に考えてしまいました。しかし絵空事であっても、こんな「テロ」が考え得る、或いは、現に存在し得るのかもしれない? という事実だけでも実に興味深く思います。
 それだけに、本書の場合はラストへ向けての転がり方がちょっと普遍的でロジカルではなかったかな、と不満を感じる一方で、主義主張がロジカルなテロリストだからこそ、この展開が妥当であったのかも、と納得せざるを得ないところが憎いですね。
 ということで、「この人たちは一体、何をやっているんだろう?」という興味がどんどん湧いてくる前半は、特に面白かったです。


025

2011年01月25日 00:01

失った過去を探す手掛かりを求めているようだね。
いいだろう、私がヒントを出そう。
何故、私がそれを知っているかなど、どうでも良い。
問題なのは、それが貴方の琴線に引っ掛かるかどうかだ。
試しに、ひとつずつ、挙げてみようか?
…コードの切れた常夜灯。
…空っぽの、水槽。
…埃を被った、ゴルフバッグ。
…片方だけ手垢のついた、ふたつ並んだ壁のスイッチ。
…廊下に置き去りにされた、茶色の瓶。
…著者の知れない掛け軸の絵。
…20年前の、地区会報。
…応接間の、小さなシャンデリア。


続けようか?
そうさ、そこには確かに貴方が住んでいた。
そこに貴方が住んでいた頃の、そこにあった物たちだ。
今はもう、ないけれどね。
繰り返そう。私が何故、それらを知っているかなど、貴方にはどうでもいいことなのだ。

【○】「きのう何食べた?・1」よしながふみ

2011年01月24日 20:56

 読みました。
 続々と紹介される男の料理に、美味しそう! と読みながら、つい、口に出してしまった。マジです。
 四十男の食生活のくせに、これほど微笑ましく温かそうな台所事情って、どうなのよ! と突っ込まずにはいられない。あと、食欲と性欲が殆ど同じレベルで語られる脚本にも突っ込みを入れずにはいられないのも注目です。


【○】「カッコカワイイ宣言!・1」地獄のミサワ

2011年01月24日 20:20

 世界で1、2位を争うくらいに暴力的な美貌を持つかおちゃん。ちょっぴりドジなのがたまにキズだけど、そんなことはこの美貌の前ではなんの影響力も持たないってことは、みんなの常識だよね?

 ということで読みました。あー、なんかこのネタ、2年くらい前に見たわ、2年くらい前に。
 物ッ凄い投げ遣りっぷりがたまりません。ウザくて。本当にどうしようもなくて笑ってしまうような、作者のセンスがそのまま形になってしまったかのようなギャグですね。好き嫌いが分かれる、というか、恐らくは表面上は「嫌い」だと口にする人が多そうなのですが、何故かハマってしまう、みたいな。
「何が面白いか分かんないから100回読み返してみたけど、全然分かんなかったよ!」
 みたいな。


024

2011年01月24日 00:01

さんざん、きみは僕のことを
嫌いだ嫌いだ言うけれど、
きみのことを世界で一番幸せにしてあげられるのは
僕だけだろう?
僕は勿論、きみのことを嫌いではないし、
きみのことを世界で一番幸せにしてあげたい
そんなことは無理だと分かっていても、
それでも、してあげたい気持ちは変わらない

好きか嫌いか
そういう話じゃあ、ないんだ、もう
僕にしかきみを幸せにしてあげることは出来ない
きみしか、僕は幸せにしてあげることは出来ない

023

2011年01月23日 00:01

「今後、全世界の平均気温はマイナス50度を下回り続けるでしょう」
世界はその夜を境に、歴史上の寒冷日を更新し続けた。
文明が栄えた現代のこと、かつての黎明期のような惨劇は起こり得なかったが、しかし、
日本で言うところの、炬燵に潜り込んだまま脱出が不可能となる、
そのような絵空事程度の境地に追い込まれる者が多数、現れた。
殆どの者は家屋を断熱構造に改装することで難を凌ぎ、
家を持たない世捨て人は、生存権を盾に行政の保護を得て難を凌いだ。
結局のところ、これまでより、ほんの数パーセントの寒さが増しただけである、
ところがその後、その『寒い日』は数世紀に渡って続くことになるのだが、
そこに一体、どんな弊害が生じるというのだろう。至極、些細な問題である。
せいぜいが、経済的な損失を被る一部の者がいる、というだけのこと。
無論それは、完全に予想出来ない、想像出来ないという世界ではないはずのことなのだ。
生きていく上で必要のない社会や公民の在り方などに現を抜かす暇があるのならば、
現世のバイオリズムに則って灼熱の世界への恐れを克服する術を備えるべきなのだ。
つくづく、時代に適用することが出来ないのだ、人間というものは。
これまでも、世界の示す事実に対して対抗出来なかったのが、
人間という余計な知能を持った生き物だけだったという話なのである。

022

2011年01月22日 00:01

 突然、彼は食事を止めてしまった。
 理由は分からない。宗教的な儀式でもないという。
 しかし、それならば普通の人ならば食べずにいれば衰弱してしまう。
 もう、7日も何も食べていない彼のことがいい加減心配になって、彼の部屋を訪れた。
 殺風景な部屋の中で、彼は普通に過ごしていた。
 けれども、その部屋に入った瞬間、尋常ではない違和感が僕を包む。
 ないのだ、何も。食べ物が。
 いや、食べ物に関するものが。
 調味料も、食器も。
 料理に関するものが。
 調理器具も、冷蔵庫も。
 調理に関するものが。
 キッチンが、入居者がいない当時の姿になっている。
 いや違う。蛇口もない。換気扇も取り払われている。
 水すらも飲んでいないというのか。

「だって、ものを口の中に入れるのが気持ち悪いんだもの」
 部屋の奥から、彼の声がした。続け様に、問い掛ける声がした。
「意味が分からなくなったんだ。食べ物って、何?」
「塩とか、砂糖とか、胡椒とかは、食べ物? それだけ食べて生きては、いけないの?」
「美味しい『食べ物』を食べないといけないの? 不味いものじゃ、どうして駄目なの?」
「食べられる『食べ物』じゃないといけないの? 無害な毒を食べて生きてはいけないの?」
「水だけじゃ、生きてはいけない。水だけしかないのなら、水も、いらない」
 僕は彼の呼び掛けに答えないといけない。

021

2011年01月21日 00:01

 昔からのクライアントである彼と、仕事の話で食い違って、口論になった。彼の提案を僕が飲み込み切れなかったのがそもそもの発端なのだが、そうそう易々と引くわけにもいかない。最初はそれでも冷静に会社同士の話し合いであったのが、次第に個人的な内情に踏み込まれ、
「アンタって、詰まらない奴だよね」
 と、突然言われて正直、呆けた。
「は?」
 そんな返事とも相槌ともつかない言葉を漏らして、僕は彼を見遣る。
 まるで子供の喧嘩だが、お互いにまだ若かったのだ、その頃は。
「ほら、アンタのそんな表情、大ッ嫌いなんだよ。阿呆らしい」
「…なにが」
「そうやって、口を開きっ放しにしてるところとかさ」
「…そんなこと、していないよ」
「瞬きが急に増えるところとか」
「していないったら」
「納得がいかないと頭を掻くとか」
「……」
「唇を舐め出すとか」
「……」
「目をそらすなよ」
 いい加減、観念して僕は両掌を彼に向ける。
「随分、続け様に言われたな。そんなこと全部、してたのか」
 そう苦し紛れに言うと、彼は笑った。
「まさか。アンタがしてるのは、口の半開きだけさ。でも、僕はそれが一番、嫌いだ」
 ただそれだけなんだ、と彼は言う。
 そう言いながら、彼は不自然な瞬きを繰り返した。
 無意識に僕は首を指先で掻きながら、次第に苛立ちを感じ始めていることに気づいている。

【○】「青年のための読書クラブ・2」桜庭一樹・タカハシマコ

2011年01月20日 21:01

 東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者(アウトロー)だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の<クラブ誌>があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちの手によって脈々と記録され続けていた……。
 第2巻では、ある日突然、失踪した学園の創始者・聖女マリアナの驚くべき秘密が明かされる!

 ということで、読みました。
 第1巻に続いて、絶妙なタッグとなっているコミカライズ。第3章は学園モノと呼ぶにはどうしても違和感が生じてしまうのですが、まるで「秘密の園」の住人であるかの如くに己の信じたものを真っ直ぐに信憑、信仰してしまう、女学生たちの虜となった聖母マリアナの話となれば、これはもう一読すれば倒錯感に襲われて眩暈がしそうになります。
 作中の言葉を借りれば、この世は南瓜のような世界。固い頭に覆われた信仰心は、信じる相手がいればそれで満足なのか? 相手から自分を信じられることには捉われないのか? 少し考えてしまいました


020

2011年01月20日 00:01

ほら、こっちにおいでよ。
ぼくは絶対に裏切らないよ。
ぼくはきみだけを信じるよ。
きみの思いを全部、受け止めてあげるから。
きみの全部を、受け止めてあげるから。
ぼくを全部あげるから。
何もかも きみの好きにしていいんだから。
何もかも、きみの自由にしていいんだから。
ぼくは何も拒否しないよ。
きみの言うことに従順に応えるから。
ぼくを飼い慣らしたいんでしょう?
そうしたいんでしょう?
ぼくが欲しいんでしょう?
ぼくに与えたいんでしょう?
ぼくの全部を、きみのものにしたいんでしょう?
ぼくの全部を、きみだけのものにしたいんでしょう?
ぼくに依存したいんでしょう?
ぼくに依存して欲しいんでしょう?
どうなの?
違うの?
違うの?

どうしたの?
こっちに、来ないの?

【◎】「新世界崩壊」倉阪鬼一郎

2011年01月19日 19:22

 美女・シンディはある組織に属し、ニューヨークを拠点として特殊な任務を遂行している。あるとき彼女は組織の命でターゲットである男をニューヨークの密室で殺害後、瞬時にロンドンに移動。またあるときはアメリカの東海岸から西海岸へ瞬間移動し殺人を繰り返す!彼女は何者!?そして世界崩壊を企む謎の組織の実態とは。

 くくく倉阪鬼一郎がまたやったー!
 と大喝采してしまった一冊。堂々と本書がバカミスであることは謳われているので、疑念の余地なく楽しませて頂きました。どうせまた館って言っても家じゃなくてなんとかかんとか、と眉唾しながら読んでいたら…、引っ繰り返るかと思った! 大胆過ぎる、そして緻密過ぎる伏線。本書のタイトルではないですが、もう冗談でなくこの事件の真相は(色んな意味で)世界が根底から覆されるような衝撃を秘めています。
 例によって中盤までは何かが仕掛けられているのは分かっているのに判然としない、「早く種明かししろよー」とむずむずして仕方がないのは、もう仕様ですね。「三崎」「四神」と並んで傑作だと思う。こんなに凝らなくてもいいのに、と窘めたくなる一方、もうこれ以上にどんなネタでミステリが書けるだろう、と自作が楽しみで仕方ありません。
 上小野田警部、自業自得(人肉ステーキは、最初の登場で分かってしまいました)とはいえ、可哀想。


019

2011年01月19日 00:01

 本の楽園に、僕と彼は二人。今日も、いつもと同じだ。
 僕の名前はフェルプスくんでも何でもないのに、彼はやはり、僕をそう呼んだ。
 そして僕は、そんな名前でもないのに、彼に返事をしている。いつもと同じだ。

 ゴミ箱の中には、折れた折り畳み傘。
 パイプ椅子の上には、埃まみれのテディベア。
 テーブルの上の、サラダ油のボトル。
 いつもと同じだ。そのはずだ。そのつもりだ。
 本棚の中の、甲信地方だけ破り取られた全国マップ。
 机の上の、蓋がないジッポライター。
 握り潰された、シガレットケース。
 何が同じなのだろう。何が違うのだろう。何かが変わるだろうか。全て同じだ。
 壁に貼られた、海のポスター。
 ディスプレイの中に映るイデア。
 半分に割れたフラッシュメモリ。
 ここが何処かなど、どうでも良い。僕が誰かなど、どうでもいい。
 窓に映る漆黒のキャンパス。
 コップの中の、虹色の飴玉。
 蛍光灯からぶら下げられた、紐のついた誰かの名詞。
 
「ねえ、フェルプスくん」
 遠くで声がした。誰だ。
「まだ、ちゃんと、そこにいるかい」
 誰でもない。そう、誰でもないのだ。
 何を見る必要もない。言うことも、聞くことも、感じることも。
 何かが狂い始め、でもそれが何かは分からない。
 けれど、
 それを見なければ、全ては、常全。

疲れやすい身体に

2011年01月18日 21:57

「はあ…、なんだか、色々、疲れちゃった」
 そんな台詞が似合わないですね。メンタルな人間なんでしょうか。
「きみって全然堪えない奴だよね。なんで?」
「いやあ…、はっはっはっ」
「はっはっはじゃねえよ。不思議な奴だなあ」
「何なんですかね。昔っからストレスが溜まらないですよね」
 そんな会話をリアルでしたばかりです。例の、口の悪い先輩です。
 年を取るごとに段々、図太くなっているのか? とふと思ったのですが、これが必要以上に暢気に構えている態度を継続させるようではいけないなあ、とちょっとだけ気を引き締める切っ掛けにしないといけないのではないか。そんなことよりも今は、爪が伸びすぎたせいでキーボードが打ちにくくっていけない問題点を早急に解決しなければいけないのだ。さらば!(珍しい締め方)

リバーシ

2011年01月18日 21:21

オセロです。下手なりに面白がっているので、ここしばらくは毎日ちまちまプレイ中。




こちらの素材をお借りしました。 : http://orfeon.blog80.fc2.com/blog-entry-58.html

018

2011年01月18日 00:01

言い争いをしていたわけでも、窘めていたわけでもない。辱めなんて、とんでもない。
ぼくはただ、彼に事実を伝えていただけなんだ。事務的なことさ、そんなことは。
でも彼は、そうとは受け取らなかったらしい。返事も出来ずに、黙ってしまった。
彼が泣きそうな顔をぼくに見せるから、仕方ない、ぼくは何も言わずに微笑んであげてさ。
髪を精一杯優しく撫でてあげたんだ。彼を責めているわけじゃあ、ないんだからね。
そしたら急に頬に涙を伝わせて、彼は本当に泣き出して、ぼくにこう言うんだよ。

「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい…」

どうしたのさ、本当に。
きみが、ぼくに、何か謝るようなことをしたの?
きみが、ぼくに、何かしてくれたことがあった?
まさか、だから、泣いてるってわけ?
きみは、そんなことで泣くほど、弱かったの?

言葉にはしなかった。そのまま、僕は彼の頭を抱いて慰めてあげた。

痙攣の運動!

2011年01月17日 23:44

 日曜日はなんだか16時間くらい寝ていた気がします。具合が悪かったわけではないのだけれど…、いや、具合が悪くなりかけていたのかもしれない。風邪とか、正式名称は「発熱性消耗性疾患」でしたか。「風邪」という病気はないんだよーなんて何度も書いてきたようなことを知ったかぶってドヤ顔で書いたりはしないですが。というような反語って、なんだか昔の自分っぽくて嫌ですね。
 なんだかどうしても眠くなって、寝っぱなしだったのは確か。休日で寝過ぎるのは一番勿体無い休日の使い方であるのは周知の事実ですが、普段、時間に縛られて生活している以上、そういうときこそ贅沢な時間の使い方をするのもいいものだよ、なんてことをよく言われるものですが…、時間って、消費して切り崩して使用するものじゃないからなあ。使い捨てだものね、一生涯。そんなわけで、今年は色々なことを前倒しで進めていきたいなあ、と考えている祐樹一依です。こんにちは、こんばんは。久しぶりに名乗りました。

 2日くらい続けて、なんだか末恐ろしいような夢を見てしまったので、怯えるなりはしゃぐなりの何らかの反応をした方がいいのかなあ、と思うのだけれど、基本的に、或いは根本的に、何にもならない。夢は過去に存在していたもの? それともただの空想? 空論よりは産物的?

017

2011年01月17日 00:01

え?
どうしたのさ、一体。
らしくない。らしくないよ、そんなことばかり言って。
それが、きみの正直な思いってわけ?
ふうん…、そうなんだ。
本気で、そう言ってるんだ。
きみ、言ったじゃないか、嘘は言わないって。僕に、嘘はもう吐かないって。

分かってるんだよ。
ほら。
もう一度言いなよ。
嘘じゃない気持ちを。
吐き出しちゃいなよ。
全部。
全部。
最後だもの、嘘は止めようよ。
ほら。
ほら。
ほら。

どうして俯くのさ。
言いたいんじゃなかったの?
それとも、最初から全部、嘘だったの?

016

2011年01月16日 00:01

僕ときみの境界線は何処にあるんだろう?
僕の視界?
きみの皮膚?
僕の立つ所?
きみの身体?
僕の心?
きみの思考?

何か、違うような気がする。

僕の視界は何処から始まるのだろう?
きみの皮膚は何処まで深いのだろう?
僕の立つべき所は何処にあるのだろう?
きみの身体は何処から何処までなのだろう?
僕の心は何処にあるのだろう?
きみの思考は始まっているのだろうか?

何か、違うような気がする。

そもそも、
僕ときみは何が違うのだろう?

誰も得はしない

2011年01月15日 21:21

 好きな食べ物の食べ方について言われることが多いけれど、
「〇〇は**で食べるに限るな」
 なんていう言い方は、本当に個人的で利己的な排他的主義なんじゃないかとふと思った。
 勝手に人の好き嫌いを他人に押し付けないでもらいたい、というのは割と万能な嫌がらせか。特に趣味嗜好に関する嫌悪感といった意見の押し付けというのは、パワーハラスメントのひとつかもしれない。相手が目上であるほど、ズバリ反対意見をぶつけることはなかなか出来ない。相手の納得出来るだけの説得力を持ったオブジェクションはそうそう、出来ない。単なる会話の中のご機嫌取りになってしまっては詰まらないことはなはだしいのだけれど。

 ところで、お腹一杯食べたときに時々肋骨の辺りが無性に傷むのだけれど、これはなんなのだろう。何かの疾患だったら怖いが満腹時だけではなくて前兆なく起こることもあるので余慶に怖い。そう思ってちょいと調べてみたら、筋肉痛なのか肩凝りなのか、それとも肝臓なのか他の内臓なのかはっきりとはしなかった。肩凝りであれば一番納得出来る…、というかすんなり受け入れられるのがその意見であっただけなのだけれど、大概が、ちゃんとしたところで診てもらうでもなければ、ネットの上での検索結果など、自分に一番都合の良い意見しか受け容れないのに決まっているのだ。

 多分、どちらも、結論はそういうこと。誰も得はしない。

015

2011年01月15日 00:01

誰もいない部屋にひとり、帰りつく。
誰もいない部屋にぽつり、息をつく。
誰もいないベッドには、一匹のクマのぬいぐるみ。
誰かがいた頃に譲り受けた。今はもう、誰も、いない。
誰かがいた頃を今宵も思い、涙を零しながら、眠る。きっと。
誰も救ってはくれない。夢の中ですらも。きっと。
誰も分けてくれない温もりを、クマは、奪う。いつも。
誰かに分けてあげたい血の巡りは、ただ、失われるだけ。
誰かの代わりに、また、その腹は裂かれるのだろう、いつか。
誰かのようにはいかない、ただ、白いはらわたを掻き乱し。
誰かを求めて、また、部屋を後にする。
誰かの代わりの、誰の代わりでもない、生きてもいない、クマ。
誰も救ってはくれない、ベッドの下の、クマたちと共に。

【○】「青年のための読書クラブ・1」桜庭一樹・タカハシマコ

2011年01月14日 23:30

 直木賞作家・桜庭一樹×タカハシマコが描く、史上最強にアヴァンギャルドな"桜の園"の100年間。
 東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者(アウトロー)だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の<クラブ誌>があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちの手によって脈々と記録され続けていた……

 少女を青年であると言い切った桜庭氏の見事な原作を、中性的な少年(少年という言葉自体が中性的なものである)を描くのが巧いタカハシ氏のタッチで描いた絶妙な作品。原作の、滅茶苦茶文学的な装いながら実は現物的である世界観が、捉えやすく描かれているのでは、と思います。無論、ブンガクを完璧に再現するのは難しいみたいで、女子高の恒例行事「王子選挙」などは、ここを言葉でもっと説明しておかないと足りないのだろうなあ、と感じざるを得なかったところがあって残念ですが、夢見がちなオトメと現実的なオンナとの境界線はとても面白い。


014

2011年01月14日 00:01

「でもねえ、思うんだ」
 本の塔の向こう側で、彼は口を開いている。まだ何か言いたいのか、この人は。
 僕はなんだか相槌を打つのも面倒になって、黙ったまま彼の言葉を聞くことにする。
「ふとしたときに我に返るというのかな、例えばだよフェルプスくん、きみの独り言を勝手に本にまとめられて出版されて、世界中の人がそれを読む、なんていうことがされていたとしたら、きみは一体、何を感じ、何を思うことが正しいのだろうね。何を知って、何を話すことが許されるのだろうね。僕は思うんだよ、そんな本の何が楽しいのだろうと。脚色され、脚本とされた人の一生を描いた本もあるけれど、そこにはリアリズムに満ちた虚構がある。それが本という名の虚構であると始めから分かっているからこそ、我々はその本という媒体を楽しむことが出来る。勝手に世界中に発信された個人的な囁き事など、誰が好き好んで読み耽ったりするものか、とね。誰が一体、そんな面白くもなんともない、はっきり言ってしまえば詰まらない…、そう、詰まらないね、そんなものは。そんなものを作ったりするものか。だからだよフェルプスくん、聞いているかいフェルプスくん、僕が本を読むのはそういうことなんだよ。虚構にまみれた世界の中で生きていくには、その虚構に耐えうるだけの本物の虚構の中に埋もれて、こうして本物の虚構の世界を十分に身に付けていないといけない、そう思うからこそ、僕は本を読み続けているんだ。断じて、決して、本がなければ生きていけないとか、そういうことじゃあ、ないんだよ。分かるかい?」
 放っておけばいつまででも話し続けそうな長広舌が切れたところで、僕は遠慮なく返事をする。
「分かりません」


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