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059

2011年02月28日 00:01

「コイツ、明日が誕生日なんだって」
 と、仲間のひとりが、あるひとりを指差して人の悪い笑みを浮かべた。
 どうしてそんなに邪険な感じなんだろう、とその人を見れば、明日が誕生日だというその人は、確かに妙な雰囲気を持っているのだった。まるで、自分は望まれて生まれてきたのではない、という事実をその身体と精神で表しているかのよう。
「何がそんなに可笑しいんだ?」
 僕は仲間に訊いてみる。
「だから、明日が誕生日なんだよ、コイツは」
 やはり皆も同じことをいう。だから、何なのだろう。
 もう、いい大人だから、誕生日を祝われるという事実が恥ずかしいとでもいうのだろうか。いやいや、そんな青臭いことを言っていられるのも中途半端に若いうちのことで、年を経るごとに、一年一年、年月を重ねることへの喜びを噛み締める儀式としての一日が、重みを増してくるというものではないか。ということは、単に彼らはそんな如何にも青臭いことを口にして喜んでいる阿呆だというだけのことなのだろうか。
 なんだかそれも、しっくりこないのだった。
 明日からまた暦も移るのだというこの日に限って、そんな妙なことで妙な気分になるのも詰まらないと思ったので、深く問い詰めることもしなかったし、それきり、そんなことは忘れてしまおうと思った。しかし、家に帰って、カレンダーのページをめくろうとした瞬間に、それに、気づいてしまったのだ。
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【○】「厭魅の如き憑くもの」三津田信三

2011年02月27日 19:53

 神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。

 ということで、読みました。
 ホラーとミステリの境界線を描いた佳作と呼び声高い本作の評価は偽りではなかった、というのが正直な感想。状況描写も薀蓄も実に密度の濃いホラーが基本ベースで、丁寧に伏線が張られた本格ミステリとしてもしっかり形作られている(なんだかやたら慎重に語り手の視点について冒頭から触れているなあ、と思ったら、まさかの「神の視点」。この仕掛けは面白かった)。ゆえに、「本作はミステリ」なのが分かって読んでいたので、最終的に二転三転する議論推論を楽しめたし、ラストでちょっと首を傾げざるを得ないある要素についても、この話であるのならば全てが合理的に解決してしまっては、それこそ面白くないだろうと納得すらしてしまった。


058

2011年02月27日 00:01

さあ おいでなさい と よぶこえがきこえ
ぼくたちは ふらふらとそちらにむかうことにする
やさしいような はっきりしたような つよいような
あきらかであるような あやふやであるような
でも そちらへいかなければいけない そんなきがして
ぼくらは やはりふらふらとそちらにむかうのだ
いけどもいけども とうちゃくはしないのに
そちらへ そちらへ ぼくらはあるきつづける
それは例えば明日
それは例えば未来
それは例えば希望
それは例えば妄信
それは例えば

057

2011年02月26日 00:01

↓あぶりだし






















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056

2011年02月25日 00:01

 タブレット錠を毎日30錠も食うように飲み続ける彼女に絶望の影を感じ始めた僕は、全知全能の魔法使いを探してネットの波を彷徨った。そもそも魔法使いなどというものがいるはずもなく、また同時に全知全能の神の如き人間などが存在するはずもないことを僕自身が承知の上での検索の日々だったものだから、誰もが面白がるばかりで僕に偽りの情報を与え続けるのだった。それは僕の彼女が延々と飲み続けるような破滅への処方箋なのだと冗談に冗談で返しながらも密かに全てを諦めかけていた僕の前に、ほんの一筋の光明が見えたような気がした。それは驚くべきことに、僕の街のとある貸し店舗の一室に魔法使いと呼ばれるひとりの人物が失せ物探しを請け負っているというもので、果たしてその人物が僕の求める全知全能の魔法使いと同じ価値を有しているのか否か、僕は眉唾もいいところだった。しかしこれ以上の機会は恐らくないだろうと踏んだ僕は、その貸し店舗を訪れることを決めた。そこは大通りに面した何の変哲もない事務所で、看板は掛かっていなかった。磨りガラスで中が見えなかったのを不安に感じつつも、僕は軽くノックをしてドアを開ける。事務所は無人だった。入り口の直ぐそばに応接用だと思われる一組のテーブルとソファがあり、テーブルの上には誰かが書き残したようなメモ用紙が一枚、置かれていた。何の気なしにその紙に目を向けた僕は、そこに書かれていたメッセージをまじまじと見つめてしまう。そこには僕の家である古いアパートの住所が記されていたのだ。そこにはつまり、僕の彼女がいる。毎日、タブレット錠を摂取し続ける狂った女がいるところだ。一体、これはどういうことなのか。これはまさか、僕が探していた全知全能の魔法使いの仕業なのか。全てを先回りして、僕が訪ねてくることを予見していたとでもいうのか。否、そんなはずはない。こんなメモを残したところで、全くの無意味だ。こんな意味のないことをするはずがない。では、違う人物の仕業なのだろうか。しかし、ここでくよくよしていても仕様がない。事務所には誰もいない、ということには違いがないようだ。しかし時間的にはそれほど古い話ではなく、僕と彼女以外の何者かが、紙に住所を記して、しかしそれはメモ程度の価値しかなく事務所において何処かに出掛けるような、つまりは誰かから伝え聞いた住所をその場限りでメモに残した、という行為が行われたのだという解釈しか出来ない。それでは僕は、まずは自分の家に帰るべきではないのか。今はもうそうは呼ばれてはいないが誰かにその座を譲って久しいのだという、魔法使いと呼ばれたこともある、僕の彼女がいる部屋へ。僕は事務所の奥へ踏み込むことなく、その場を辞することにする。しかしそのときの僕は、とても愚鈍だったと言わざるを得ない。ほんの数歩、その事務所の奥へ足を進めていれば、直ぐに目に留まったのに違いないのだ。入り口から正面のデスクの上には、僕が見慣れた、あのタブレットが何十錠も何百錠も詰まった大きな瓶が置かれていたことに。

055

2011年02月24日 00:01

 大人になってから花粉症になったものだから、割と大変である。
 テレビやラジオで騒がれる前から、当然、身体がそれを感じている。
 あ、花粉が飛び始めたのかな、と分かるのは、メディアよりまず個人である。
 こんなに花粉症、花粉症と大騒ぎされるようになったのは、ここ数年であるように思うのだが、気のせいだろうか。ともあれ…、他の多くのアレルギー性症状も、大抵、人間の生活環境や生活態度が影響して悪変し続けていると思われるのは、根拠がないことだけれど、多分、それで間違いのないことだろうと思う。
「花粉症? ならないならない。あれってアレルギーでしょ? そんなの昔からないもの」
 そういっていた友人が、次に会ったときには
「死ぬ! 死ぬってマジ! 目も痒いし洟も止まらないしくしゃみは出るし喉も痒いし眠いしダルいし!」
 花粉症といえばこんな症状が…、という定番を総ざらいしていたのには驚いた。何故だか同じ穴のムジナ、という感じで、妙な仲間意識が生まれるというか、アンダーグラウンドへようこそ、という歓迎のムードが生まれてしまうのにも驚いた。
 アレルギー性鼻炎、なんて一言で片付けてしまうには、花粉症というものは社会的に人類へダメージを与えるには格好の平気なのではないだろうかと真剣に考える、今日この頃で…、…、(クシュン)…、この頃である。

【○】「世界征服チルドレン・2」高坂りと

2011年02月23日 19:03

 無期限の活動停止処分!ミス研、最大のピンチ---!!
 個性強すぎるメンバーのミステリー研究部に入部した庶民派主人公・守都 茜。ミス研は、ネコミミ騒動の余波で、桐星学園理事長から学園の管理を一任されている監査委員会に目をつけられた! 和泉とリエルは謹慎処分となり、部室は使用禁止。無期限の部活動禁止処分に、ミス研はどうなる―――!?

 ということで、読みました。
 この人の描く絵のタッチって、モノクロもカラーもシリアスなシーンについてはとても儚く見えて画面映えするタイプだと思うのだけれど、はっきりめっきり逆手にとって、思い切ったギャグに仕上げてくる。自分の絵のことを良く分かっているのだと、思う…、けれど…、どうなんでしょうね。少なくとも、自分が周囲からどう見られているかを良く知っていて、それに見合った行動を取る、という少年少女の遣り取りが滅法面白いです。人生には、ぶっちゃけ、はっちゃけ、大事なことよ?


054

2011年02月23日 00:01

「ねえねえ、昨日、猫の日だったよね。何をお願いした?」
「いや…、それはちょっと、違うのでは…」

【△】「かんぱち・1」結城心一

2011年02月22日 20:36

 読みました。
 かんなぎのぱちもんで、かんぱち。なるほど…。
 武梨氏のお兄さん(つまり結城氏)って、そんなに有名だったのか…、な、原作公認のパチモン。なるほどなるほど…。ということで、原作のスピンオフなのですが、本編に混ぜられてももしかしたら違和感がないのではないか、というシーンもちらほらで面白かったです。
 水色と白色のもの…、物凄く納得した。


053

2011年02月22日 00:01

 明日が休みだったので読書でもして夜更かししようとゴロ寝しながら本を開いていた僕に、
「2時22分に間に合うように起こして!」
 と先に寝てしまったきみだったけれど、

 うたた寝してしまった。
 今、何時だ?

 22時22分に起こせばいいかな?
 あと20時間も寝ていられるかな、こいつ。

052

2011年02月21日 00:01

「あー…、駄目だ、一行も書けん」
 キーボードに手を掛けた姿勢のまま、彼は唸った。
「どうした、スランプなの?」
 頼まれたコーヒーを持って、僕は彼の横に立つ。
 ディスプレイには縦横無尽に文字が走っていた。
 比喩である。
 普通に彼らしい面白みのない文章が20行ほど書かれていた。
「…書けてるじゃん」
 コーヒーカップを渡しながら僕が言うと、
「いや、一度言ってみたかっただけ」
 彼は飄々と答えるのだった。
「なんだかこれが本業みたいで面白くね?」
「いや…、だから、書けてるじゃん」

【○】「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

2011年02月20日 18:05

 千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

 ということで、読みました。
 最初の頃こそ、古臭そうで、とっつきにくくて、読みにくい物語の流れ方だったのだけれど、いつの間にか読み進めるのが止まらなくなる。時代とは、加速し続けるものなのだ、と読みながら感じた(勿論、自分が生きる時代に近づくにつれ、その勢いは失っていくように感じるのですけれど)。ほんの数十年の間の出来事なのに、物凄く凝縮され、収斂された、男たちと女たちの、物語。僕らの知らない時代から当たり前のはずの世代へと視点が代わっていき、話が変わっていく。多少、不安定な語り口調も相まって、それはさながら、何処か他所の国の伝奇であるかのようなファンタジックでファンタスティックな情景がそこかしこに感じられるような気がします。
 ラストに向けて段々と「普通」になっていくのも面白い。多少…、というか、求められて仕方なく、というような空気も感じるのですが、一応、ミステリとしても読めるのかな、という程度。桜庭氏は本作で日本推理作家協会賞を受賞していますが、その辺であまり期待をしても読み違えてしまうかな、と思われます。


051

2011年02月20日 00:01

「ブラックコーヒーってさ、あまり好きじゃないんだよね」
「砂糖入れろよ」

   *   *   *

「トマトジュースってさ、たまに飲むと美味しいよね」
「トマト食えよ」

   *   *   *

「あー、日曜日だからって寝坊したらなんか勿体無いよね」
「早く寝ろよ」

   *   *   *

「この芸人嫌い。見るだけでムカムカする」
「テレビ消せよ」

   *   *   *

「アンタのこと嫌い。見てるだけでイライラする」
「僕は好きだけどな、アンタのこと」
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050

2011年02月19日 00:01

「こんばんは」
 久しぶりに夜にやって来た友人と、少し飲むことになった。
「ありゃ、ビール切れてる」
「日本酒でもいいよ」
「料理酒でいいならな」
 というわけで、近所のコンビニに歩いて買い出しに行くことにする。
 コンビニに向かう少し手前に信号のある交差点があり、夜には殆ど車も人も通らない所なのだが、友人は律儀に信号が赤から青に変わるまで、横断歩道の端で待った。
「道交法は守らないとね」
 なんて、もう酔っ払ってるのかと思うようなことを言う。
「誰も通らないのに?」
「誰かが見てるからとか、そういうんじゃないよ、法律ってのは」
「人をひとり殺してバラバラに分解して山に捨ててきても、それが世間にばれなきゃ殺人犯として逮捕されないのと同じ?」
「それはそれで違うな。誰にもバレてなくたって、人を殺したら殺人犯で、殺人罪だ」
「死刑または無期懲役だっけ」
「そうそう」
 そんな話をしながら青に変わるのを待つ。なかなか変わらないのに焦れて、僕は横断歩道を渡ってしまう。
「だってまどろっこしいもの」
 非難の視線を浴びながら上を見れば、
「ああ、そういえばここ、感応式だった」
「莫迦」
 そう悪態をつきながらも、彼はやはり律儀に歩行者用ボタンを押すのだった。
「どうしてそんなに保守的なわけ?」
 信号が変わって、青信号の下、横断歩道を渡ってくる友人に訊いてみる。
「変な言い方。…別に理由はないよ。ルールだから、ってだけ」
「ルールは大事だ」
「根拠を知らなくても、守らなきゃいけないのが、社会的なルールだろう」
「誰も見てなくとも?」
「誰も見てなくとも」
 そんなことを言い合いながら、コンビニで酒とつまみを買う。
 帰り道でもやはり信号のある交差点を渡ることになり、僕はわざと赤信号の下、交差点を斜め横断してやった。
「子供の頃から憧れなんだよね、斜め横断」
 信号待ちをしながら、彼は、そう、ぽつりと呟くのだった。
「すればいいのに」
「僕の話じゃない。皆のこと。でも、これがルールだ」
[050]の続きを読む

049

2011年02月18日 00:01

 髪の長い友人がいる。この場合は、女性の話。
「髪、切ろうかなあ」
 良いんじゃない、と僕は曖昧に返事をする。
 基本的に会話が下手な僕は、基本的に話しかけられたらまず、短い相槌を打つ。
「短い方が好き? 似合うと思う?」
 割とね、と僕は曖昧に返事をする。
 それから、短いのも良いんじゃない、と相手の言い分をそのまま肯定する。
 基本的に相手の言い回しには否定的な言い分はしない僕である。
「長いときとどっちが好き? 長い方がいいならこのまま伸ばす」
 短くてもいいと思うよ、と僕は先程の返事を繰り返す。
 相手が言いたいことがどんなものか、注意深く観察するのは大切なことだ。
 基本的に、やはり僕は自分からは掌を返すようなことはしない。
「じゃあ、やっぱり切ろうかな。もう少ししたら暖かくなるし」
 そうだね、と僕は肯定する姿勢を変えない。
「ああ、でも、まだちょっと寒いものね。暖かくなるのを待ってからでもいいか」
 そうだね、と僕は肯定する。大抵、相手は僕にそれを決めてもらいたいのではない。
 かといって、自分の決断を後押しして欲しいわけでも、引き止めて欲しいわけでもないのだ。
 予測して、予定していることを、自分で再確認しているに過ぎない。
 その場の相手は、独り言に対して相槌を打つ役割のようなものなのだ。
 多くの会話とは、その繰り返しだ。

【◎】「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣

2011年02月17日 20:03

 学問の深遠さ、研究の純粋さ、大学の意義を語る自伝的小説。

 読みました。
 本書を読んだ後に、短編集「まどろみ消去」の「キシマ先生の静かな生活」を読んでみた。凄い。この本と、全く同じなのだ。この本が、短編を薄めたようなヴォリュームのものであるなんて勘違いして欲しくない。その逆だ。森博嗣氏は、短編というのは長編を書き得るだけのアイデアを凝縮させたものである、と何処かで述べていたように覚えているのだけれど、本当にその通りなのだと感動した。つまり、この本は、森博嗣のエッセンスがたっぷり詰まった、物凄く贅沢な本なのです。
 しかも自伝的小説。恐らくは本人の思想であろう、研究論が盛り沢山。どうしても、森博嗣氏の著作やサイト、ブログなどのテキストを多く読んで、氏の肉声に多く触れている(と勘違いしている僕みたいなファン)人ほど、本作がどうしてもフィクションには読み取れない、ような気がします。僕も半分くらい、これは自伝だな、という束縛から逃れようもなくのめりこんで読んでしまいました。この辺り、作家の力量、と呼んでしまっていいものか…、作者のひとり勝ちなのでは、とも思うのですが、どうでしょう。
 主人公も、主人公が尊敬して止まない先生も、何もかもが創作の過程で生まれたものでしかないのかもしれない。でも、読者というものは、そこに生気を見出す。不特定多数の脳裏で、それはつまり過去に蓄積される記憶に、それらは、彼らは、存在し続ける。何処までも静謐な、冷たい世界が、その中でいつまでも広がり続ける。それはもしかして、我々の思考、そのものの作りと似ているような気がするのですが…、果てさて。
 森博嗣は、いつまでこんな小さなエンターテインメントに手を貸してくれるのだろう、次はいつなのだろう、とまた楽しみになってしまいました。


048

2011年02月17日 00:01

 たまには綺麗事を呟いてみよう。

 創作活動で巧くいかずに、あるいは思考が止まって困ったときには、何でもいいから書いて、描いてみるに限る。
 少なくとも、文と絵に関しては、それが強く言える。
 それが明確な作品である必要はない。出来上がった、或いは、出来上がりかけたそれを見たときに、恐らく、そのときの貴方は、普段よりも客観的に、自分の創作に対する姿勢と向き合うことが出来るだろう。それにより自己の分析が出来ればそれでよし、現在の自分の在り方がそれだけでは見えてこないようならば、何でもいいから書いて、描いてみることを繰り返す。幾ら繰り返してもだけならば、少しの休憩が必要なのだろう、貴方には。その間は、何か他のことを、何でもいいから他のことをする。書くこと、描くことを忘れて、何かをする。ぼんやりと、何も余計なことを考えずに。たまには純粋に金を稼ぐことに集中してもいいだろう。普段は滅多にしない、副菜4品の夕食などを作ってみるのもいいかもしれない。そのうちに、やっぱりぼんやりと、自分の中の感覚、感性、欲求を刺激するものが現れる。それは絵でも、文でも、曲でも、映像でも、全く自分のしていたこととは関係のないことかもしれない。一体何が自分にとってストレスになっているのか、少なくとも、何が自分の意欲を減衰させるのかを突き止めるだけでも、今後の創作活動のリスクヘッジとして役に立つかもしれない。こんな感じに普段の会話では使わないような単語がぽんと浮かんでくるようであれば、もう好調の波に乗ってきたと考えて間違いがない。絵描きで言えば、普段は描きもしないものが不意にキャンバスに現れてきたときなどは、もう、しめたものである。あとはひとまずであれ、自分の納得が行くまで一通りのタームをこなすことが出来るだろうと確信する。それが意識的であれ、無意識的であれ、集中して取り組まずにはいられないものが現れたときには、もう巧くいくとかいかないとか、何かを考えながら物事を進めるとか、そういう次元の話ではないのだ。その先に何が生まれるかは、己の感性を信じるしかない。そこに生まれるものが感情的なものなのか、論理的なものなのか、それすら危うい産物であればあるほど、そこには間違いなく新しさがある。それをまた客観的に見る自分は、こんなものが書けた、描けたのか、と自分を見つめ直す切っ掛けに導かれる。
 行き止まりの道に立ったとき、壁に穴を開ける、或いは、地面に穴を掘る、或いは、壁を乗り越える。引き返すことだって思うがままなのだ。そこには自由しかない。

047

2011年02月16日 00:01

「どうしよう、何も考えられなくなっちゃった…」
 真夜中に電話が掛かってきたときには、何だ事故か怪我か急病かと泡を食ったのだが、相手はただただ泣きそうな声で繰り返すのだった。何も考えられなくなってしまった、どうしよう。そう繰り返すだけの相手に、僕は何も言うことが出来ない。一体何なのだ、本当に、こんな時間に。どうやら、僕のことをからかっているわけでもないことは口調で知れたのだが、その言い分が全く理解出来ないので困ってしまった。何なのだ、『何も考えられない』とは。人は何かを考えずには生きることは出来ない生き物ではないのか。人は考える葦である、と昔の人が言ったのだと聞いたことがあるが、何だ、葦って。川原に生えてる、あれか。あれが思考するのか。それが人のようなものだというのか。人は川原に生えているような細い草に過ぎないということか。精々、考えろということか。幾ら考えても細い足一本で行動することは出来ないではないか。人は考えずには行動をすることは出来ない生き物だ。ひ弱な植物の一種と一緒くたに捉えてもらっては困るではないか。人間はもう少し合理的で生産的で一方で衝動的な生き物ではないか。
「もしもし、もしもし…」
 どうしよう、どうしよう、と受話器の向こうで呟き続けている声に、僕は返事が出来ない。そんな不安げな、不安でしかない、自分は不安というもので出来ている、みたいな声で語り続けられたら、僕は何も考えられなくなってしまう。それでは困るのだ。あちらとこちらで何も分からなくなってしまっては、堂々巡りで世界が閉じてしまう。この世界はたったふたりのためにあるわけではないのだ。僕らはひとりきりでは生きられないけれど、ふたりだから大丈夫だと胸を張って生きていけるわけではない。全ての享受の対象をひとりに向けて満足出来るほど、精神的に貧しいわけではないのだ。逆に考えれば人間は他のどんな生物よりも貪欲な生き物である、ということに他ならないが、そうはいっても完全な孤独と完璧な依存のどちらかを選べ、との選択を突きつけられたら、僕は決断を放り投げるだろう。僕だけではないはずだ。そんな理不尽があってたまるか、そう思うのだ。
「答えてよ…、どうすればいいの…、どうすれば…」
 考えられないのならば考えなければいいではないか。何なのだ、『何も考えられない』とは。人は何かを考えずに生きることは出来ない生き物ではないのか。人は

【○】「おたくの娘さん・6」すたひろ

2011年02月15日 19:45

 半年で耕太と別れるという事実を聞かされた叶。迫り来る期日に自分はこれからどうしたいのか整理が付かずもやもやしていた。悩む叶を前に耕太は父親としてある決断をするのだった――。

 ということで、読みました。
 コータは自分の思うがままに自由に自分の人生を歩むことが出来るのかなあ、と、ふと真面目に心配して考え込んでしまいました。初めてというわけでもないし唐突というわけでもないのに、ここに来てこのどろどろとした空気はどんなもんでしょう。ギャグよりもシリアスな場面が多いことは本シリーズにとって追い風となっているのか、それとも向かい風になってしまっているのか。
 描きたいと思っちゃったから描いちゃった。みたいなエピソードが始まりそうなのですが、巧いこと消化してもらいたいものです。一服の清涼剤があのホラーシーンなのは本当に救いですね(笑)。


【○】「おたくの娘さん・5」すたひろ

2011年02月15日 19:43

 夏休み、叶と耕太はなぜか彼岸荘のメンバーと温泉旅行に出かけることに。旅館に叶の母・望が仲居として働いていて……!? ドッキリ驚愕の温泉編に加え、にっち先輩のロリコン暴走話、夏コミ後日談を収録。

 ということで、読みました。
 夏休み編、一般の部。一般の部…、というかそもそもそれ以外が本編として描かれること事態が邪というか蛇というか。なんだか作者も読者もこなれてきたのか、マニアックな描写は減ってきたというか、穏やかになってきたというか。しかし、そうはいっても、オタクの夏、真っ盛りでしたね。


【◎】「きのう何食べた?・2」よしながふみ

2011年02月15日 19:40

 食べるは、幸せ。
 グリーンアスパラのからしマヨ合え、鮭のみそホイル焼き、セロリと牛肉のオイスターソース炒め、
 黒みつがけミルクかんてんetc.……おウチで食べよう。

 というkとおで、食べました。違う。読みました。
 第1巻と殆どやってることは同じ…、話の筋に多少の広がりは付き始めているものの、基本的に「ゴハンを作って食べる話」であるという印象が強い。なのにもかかわらず。どうして読んでて面白いと思ってしまうのか不思議。(独り言の多い!)男の人が夕飯を作って同居人の帰りを待っているだけだというのに…、あ、それか。その哀愁がなんとなく感じられるからなのか。だから余計に美味しそうなのか。変わったメニュでもないのに、読むそばから自分でも作ってみたくなってしまう不思議!
 そしてやっぱり、「欲」が見え隠れしちゃう不思議。


046

2011年02月15日 00:01

「た大変大変大変!」
「なんだおいどうした」
「いき息の仕方忘れちゃったどうしようどうしようどうしよう困った!」
「おいおいやばいなちょっとちょっと落ち着けよ」
「だって無理無理息出来ないどうしようどうしよう」
「落ち着け落ち着けってば無理なことないからしっかりしろよ」
「無理無理無理苦しいの止まんない困ったよう」
「だから息吸って吐くだけだって大丈夫だから」
「やだやだ出来ない出来ない苦しいよう息息!」
「参ったな、ほら、一回、全部、止めて」
「え、あ、う」
「な、大丈夫、息、してごらん」
「あ、う、う」
「止めるなって。息を吸うんだよ、ほら」
「うう、あ、う」
「いや、だから、ほら、吸うの。息を」
「う、う」
「おい、ちょ、しっかり、しろ」

045

2011年02月14日 00:01

「ねえねえ、来週明け、バレンタインデーだよ」
「あ? ああ」
「チョコレート、誰にもらうの?」
「知らねえよ。なんでもらう方が知ってなきゃいけねんだよ」
「はあん、当てがないんでしょう」
「だから知らねって」
「なによお。折角くれる人がいないんなら作ってあげようかって思ったのに」
「…いんだよ」
「え? なに?」
「奥歯が痛いんだよ。虫歯!」
「え、…ああ、そう」
 そんな言い訳をする人がいてもいいんじゃない? という話。
 もしかしたら言い訳じゃなくて本当で困っちゃってる人もいるんじゃない? という話。

044

2011年02月13日 00:01

「熱心ですね。勉強ですか」
「いえいえ、本を読んでるだけです」
「何の本、読んでるんですか」
「ミステリです」
「ミステリ?」
「ああ、推理小説ですよ」
「ああ…、普段、読まないからどんなものか分からないですね。面白いですか」
「面白いですよ、結構」
「ふうん…」
 大抵、ここで会話は終わってしまう。
 普段本を読まない人に対して、「ミステリ」がどんなものなのか一言で説明するのはは非常に難しい。
 大体、ミステリを読んでいる最中なのに、余計な会話はしたくない、そうミステリ読みは考えてしまうのだから始末が悪い。果たして、面倒くさがらずに、的確に、しかも即座に読書に戻れるような、スマートな「今、ミステリを読んでいます」の説明方法は存在するのだろうか。誰か教えて欲しいものである。

【◎】「テルマエ・ロマエ・1」ヤマザキマリ

2011年02月12日 22:56

 世界で最も風呂を愛しているのは、日本人とローマ人だ!!
 風呂を媒介にして日本と古代ローマを行き来する男・ルシウス!! 彼の活躍が熱い!! ……風呂だけに。

 ということで読みました。
 古代ローマの建築士、現代日本に学ぶ。一言で言うと、そんな話です。本当です。そのまんまです。嘘偽り無しです。こんな大技をやってのけてしまったアイデア勝ちだと思う。大真面目だからこそ滅茶苦茶シュールで面白可笑しい。全く言葉が通じない「ローマの人」相手に、田舎のじっちゃんばっちゃんが色々指南するところも、ものぼのし過ぎて意外と似合っていて異文化交流ってそんなものなのか…、そんなものなのか? と納得したり出来なかったり…。
 フルーツ牛乳飲みたいなあ。


【○】「嘘喰い・3」迫稔雄

2011年02月12日 22:56

 Q太郎の策謀を全て撃破した貘たちは、ついにロデムをも味方に引き入れる。最終局面を迎えた勝負は、衝撃の結末へ!! そして「賭郎」に対する“嘘喰い”の真意とは!? 闇深き新たな賭博地獄の扉が開かれる!!

 どれだけ読者を驚かせたいんだよ、と率直に驚いた「嘘喰い」オープニングゲーム、ビルディング脱出。これくらいの意外性を持ってしてもなお、腹に抱えているものが少しも見えてこない策士の姦計の奥深さ…。「暴力を手に入れる」って字面が凄いインパクトだな。
 続いては、一見、ぐっと庶民的なゲームであるセブンポーカー。問題なのは、一般人である梶が背負うギャンブラーのシチュエーションの重さ。はてさて。


【○】「嘘喰い・2」迫稔雄

2011年02月12日 22:56

 謎の賭博組織「賭郎」の会員権と一千万円を賭け、廃ビル脱出勝負に挑む貘たち。
 勝負に負ければ、待つのは“死"!! 機知を利かせ、敵から武器を奪った貘の前に新たなる刺客が迫る!!

 序盤戦、なんて1巻を読んでいたときは思っていたけれど、とんでもない。「ビルからの脱出」ゲーム。ルールはシンプル、しかしそうであるほどに、その中でもがき生きようとする者の組み立てる戦略は、どうやらとても複雑なようです。とかく、描かれるべきものが心理戦であると明確に打たれているのに、アクションシーンの濃さといったら。人はあれほどの極限状態の中で、対戦相手をああまで陥れられるものなのか? げに恐ろしきは、嘘喰い。


043

2011年02月12日 00:01

小さな水鉢を買ってきて、水を満たし、
その上に睡蓮を浮かべた。
花の中で、一番好きな睡蓮である。
慈しむように、育てた。
始めは蕾が開くのが遅くて焦れたものだが、
薄桃色の花弁が見えるようになると、私は、
まるでそれがこの世で最も美しいもののように見えた。
育てる、といっても、人間の私には、
出来ることは限られている。せいぜいが、
叶うことならば美しい少年が咲くようにと、
願いを込めて丁寧に水をやるくらいのことしか、
出来ないのである。それは恐らく、どの、
世界の住人でも同じことであろう、しかし、
それが多分に、一番、睡蓮を育てる際には、
肝心なこと、大事なことなのだと思う。
まだ、育て続けている。まだ、なかなか、
少年は育ってこない。

042

2011年02月11日 00:01

 真夜中、突然のチャイムに驚きながらドアを開けると、
「お誕生日おめでとう!」
 と大きな包み紙を持って彼が僕の目の前にそれを突き出した。
 つい受け取ってしまってから、
「…ありがとう。なに、これ」
 言いながら改めてみると、何やらとても緑色である。葉っぱが沢山あるのだ。
 というか、これ、全部、葉っぱじゃないか。
「四つ葉と五つ葉と、あとほんの少し六つ葉もあるよ! 誕生日プレゼント!」
「クローバーか」
「そう!」
 好きで書、クローバー。そう言う。
「こんなにか。全部」
「そう、全部!」
「いい迷惑じゃないか? こんなのあげても、相手が」
「迷惑?」
「正直な。あと、誕生日は来月の、今日だ」
「…マジで?」
「マジで。返そうか」
「迷惑!」
「だよなあ」
「来月でも迷惑だから!」
「僕もだ」
 そのとき0時1分。玄関先、ふたりで首を傾げるのだった。

041

2011年02月10日 00:01



 横で寝ていたはずの彼がむくりと起き上がって、

「階段の下に試食用のお菓子があったので6つもらった」

 と微笑んで両手を差し出してきたときの僕の表情を想像してみてください。



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